第13話「影の正体と試練の核心」
光が消えた回廊に、静寂が訪れた。
しかし、黒衣の影は完全に消えたわけではなかった。
暗闇の中、冷たい笑いが微かに響く。
「……よくここまで来たな、三人とも」
アルトが警戒の構えを取る。
「お前は……誰だ?」
その問いに、影はゆっくりと形を現した。
薄紫の瞳を持つ人物――その顔は、かつての仲間を思わせる微かな面影を帯びていた。
セシリアは息を飲み、言葉を詰まらせる。
「……な、何者……」
ヴェイルは冷静に観察し、分析を始める。
「この力……ただの影ではない。ルナの涙の力に何か関わっている……」
黒衣の人物はゆっくりと前に進み、祭壇の欠片に目をやる。
「その欠片……ルナの涙の真の力に触れたのか。ふふ、ならば試練は本格化するな」
アルトは胸の欠片を握りしめ、心の奥で叫ぶ。
「俺たちは……どんな試練でも絶対に負けない!」
影は嘲笑うように言った。
「試練……それは、ただの力試しではない。お前たちの心の深淵まで、突きつけられるだろう」
セシリアはアルトの手を握り、力を貸す。
「怖くても、私たちは一緒にいる……あなたと、ヴェイルと」
ヴェイルは影の動きを封じるように光を集中させる。
「俺たちの信念を見せてやる。仲間と共に、前に進む!」
ルナの涙の欠片が胸で脈打ち、青白い光が三人を包み込む。
光と影がぶつかり合い、回廊全体に渦を巻く。
欠片は微かに震え、三人の心の奥底に潜む恐怖や後悔を映し出す。
アルトは目を閉じ、深く呼吸する。
「恐怖も痛みも……俺の一部だ。逃げずに向き合う!」
その決意と共に、欠片の光が一層強くなり、影を押し返す。
「くっ……まだ、お前たちは底を見せていない……」
黒衣の影は一歩後退したが、消えることはない。
「試練はこれからだ。真の核心に触れる覚悟を見せよ」
三人は互いに視線を交わし、覚悟を新たにする。
回廊の先、闇の中に次なる試練の扉が微かに浮かび上がる――
そこに待つのは、力だけでなく、心の在り方を問う試練の核心だった。