第10話「欠片が映す未来」
回廊を抜けると、外の光は目に刺さるほど明るかった。
祭壇の青白い光とは違い、柔らかく温かい日差しが降り注ぐ。しかし、光の下に立つ三人の影は、どこか揺れているように見えた。
アルトは胸元の欠片を握り締める。
「……この力、完全には理解できない。でも確かに、俺を変えた」
セシリアはそっと深呼吸し、周囲を見渡す。
「祭壇の光……あれは私たちの心を試すものだった。でも、この先も試されるのね」
ヴェイルは前を見据え、淡々と告げる。
「試練は避けられない。だが、今の力をもってすれば、道は開けるはずだ」
その瞬間、遠くの空がわずかに歪み、黒い影が蠢く。
欠片が胸の奥で脈動し、警告を送る。
「……誰かが来る」
アルトは直感で告げる。手元の欠片が鋭く熱を帯びる。
影は徐々に形を取り、空中に浮かぶ不気味な黒衣の人物が現れた。
「やっと見つけたぞ、ルナの涙を継ぐ者たち……」
冷たく無機質な声が空間に響く。
セシリアはアルトの肩に手を置き、戦闘態勢を整える。
「覚悟して、アルト。敵はただの影じゃないわ」
ヴェイルも両手を構え、冷静に見据える。
「戦うだけじゃない。情報も、戦術も……すべてを駆使する」
黒衣の人物は笑った。
「力だけで秩序は守れぬ。試練とは、心の強さと選択の鋭さを問うものだ」
空間が歪み、景色が霧のように変化する。
三人は胸の欠片を見つめ、視線を交わす。
「試練……か」
アルトはゆっくり頷き、拳を固めた。
「……ならば、俺たちの誓いを示すだけだ」
欠片から青白い光が再び溢れ、三人を包む。
祭壇で感じた痛みと覚悟が胸を駆け巡る。
「これが……俺たちの選ぶ道」
アルトの言葉は、仲間たちの心にも確かな光を灯した。
迫る闇の影――しかし、三人は互いの意志を信じ、歩みを止めない。
ルナの涙の欠片を胸に、試練の先に待つ未来へ――
まだ誰も知らない、欠片の力が示す真実と影の正体が、三人を待ち受けていた。