15.暁のオブシディアン ~1.影を宿す石~
夜の帳が下りた都市の一角、煌びやかなライトアップに包まれた高級オークション会場がその存在感を放っていた。 この場所で、世界的な秘宝「暁のオブシディアン」が出品されるニュースは、表のメディア以上に裏社会を揺るがしていた。 怪盗アルトもその一人だった。
会場の裏に立つアルトは、黒のジャケットを羽織り、ポケットから最新の電子端末を取り出した。
「さて、このショーの幕開けとしよう。」
激しくつぶやくと、アルトは影のように建物の中から滑り降りた。
オークションのフロアでは、富裕層の男女がシャンパンを片手に笑っている。 その中央に飾られたガラスケースの中に、ひときわ目が覚めると漆黒の宝石が輝いていた。 「暁のオブシディアン」。
「美しいだろう?」
アルトが高台の陰からその景色を見つめていると、横から低い声が聞こえた。 そこには、彼が何度か対峙したことのある競争相手、暗殺者のカインが立っていた。 黒のスーツに身を包み、冷たい笑みを浮かべている彼は、手にナイフを持っている。
「こんなところで会うとはね、アルト。」
「君も同じ目標か?」
「もちろん。だが、君のような気まぐれな怪盗と違って、私は確実に成功する。」
カインが言いそう言う前に、アルトは頭に近くひるがえし、の棚から煙幕弾を放った。 白い煙が広がる中、アルトは床まで滑り込み、警備員たちの懸念をかわしながらガラスケースへと近づいた。
それでも、計画通りに事が運ぶわけではない。
「侵入者がいる!」
警備員の声が響きわたる中、アルトは動く事なく手早くケースが出て、「暁のオブシディアン」を取り出した。
しかし、その瞬間、暗闇の中で冷たい風を感じた。 次の瞬間、何かが彼のすぐ横を掠めた。 鋭い音とともに、カインのナイフが壁に突き刺さる。
「簡単には逃げないぞ、アルト。」
横からカインの声が聞こえた。 しかし、アルトは微笑みを捨てたまま振り返らずに聞いた。
「それは、どうでしょうか。」
アルトはかなり階段を向かって向かって、一気に下りた。
建物の外に出たアルトは、人気のない路地に身を隠した。 ポケットから「暁のオブシディアン」を取り出し、その美しさをじっと見つめる。 冷たい月明かりが宝石の表面に反射し、その奥底に何かが揺らめいているように見えた。
「これが、あの王朝の滅亡を招いたという代物か……」
アルトは深い息を吐いた。 しかし、その安堵も束の間、横からまたもや足を聞いてきた。
「まだ逃げる気か?」
振り返ってみると、そこにはカインだけでなく、さらに複数の影が現れていた。
「カオスグリフ……!」
アルトは彼らの存在を知っていた。宝石や古代の秘宝に執着するこの暗殺者集団は、数々の血塗られた事件の正面に存在している。
「暁のオブシディアンは我々のものだ。大人しく渡って、命だけは助けてやる。」
リーダー格の男が冷たく言い放つ。
「悪いな、俺は簡単に物を手放すタイプじゃない。」
アルトは意図的な笑みを落として、足元の小型爆弾を起動し、煙の中の姿を消した。
アルトはその後、仲間である情報屋に連絡し、今回の真実についての情報を聞いた。 彼の手元には、宝石事件とともに入手した暗号化された文書がある。
「これ、ただの石じゃないみたいだな。」
情報屋がそう言いながら画面を操作すると、文書の一部が解読された。 そこには、古代の王が滅亡直前に遺した言葉が記されていた。
「暁の石は、世界を変える鍵となるだろう。いずれにせよ、それを持つ者が心に闇に染まれば、その力は災厄をもたらす。」
その内容を聞いたアルトは、深く考えた。 でも、そんな暇はなかった。 また「カオスグリフ」が彼の居場所を突き止め、次なる攻撃を仕掛けてくるのは時間の問題だった。
「これで終わりじゃない。ちなみに、始まりだ。」
アルトはポケットに宝石を落とし、新たな覚悟を胸に次の行動を考え始めた。