表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/206

第3話「矛盾する誓い」

祠を包んでいた光が激しく脈動した。

アルトとヴェイルの激突によって、古代の星図はひび割れ、刻まれていた“契約の紋”が剥き出しになっていく。


矢の一撃が石床を抉り、火花のような残光が飛び散った。

アルトはそれを身を翻してかわし、瓦礫を蹴って反撃の刃を振るう。

しかしヴェイルは一歩も退かず、黒い弓で受け止めると、すぐさま反撃の矢を繰り出した。


「速い……!」

セシリアが思わず声を上げる。

その矢は、ただ肉体を狙うのではなく、アルトの背後に広がる祠の“記録”を吸い込みながら飛ぶ。

星々の契約が刻まれた壁画が、次々と闇に呑まれて消えていく。


「お前の狙いは、記録そのものを消し去ることか。」

ファントムの声が低く響く。

ヴェイルは仮面の奥で苦笑を浮かべた。

「記録など残す意味はない。あれは呪いだ。契約を知る者がいる限り、この宇宙は束縛され続ける。」


「それでも――」

アルトは踏み込む。

「記憶を奪えば、未来を選ぶ権利さえ失われる!」


両者の刃と矢が衝突し、祠の奥に雷鳴のような轟きが響き渡った。

その瞬間、星図の中心から青白い光が噴き出し、巨大な幻影が姿を現す。


それは人の姿を模してはいたが、輪郭は揺らぎ、星々のきらめきと影が交錯する存在だった。

「我は契約の証人、“クロノス”。」

その声は祠全体に響き、時を震わせる。


「千年の時を超え、選ばれし者たちよ。汝らは問われる。契約を守るか、壊すか。」


ヴェイルが叫ぶ。

「壊す! 俺はこの呪いを打ち砕く!」

一方で、アルトはその光を見据え、静かに答える。

「守る……いや、盗む。俺たちの手に取り戻すために。」


クロノスの幻影は揺れ、星々の光が二つの道を示した。

一つは「滅びを防ぐための犠牲」。

もう一つは「秩序を越えて生まれる新たな未来」。


ファントムはわずかに目を細める。

「……ついに来たか。契約の岐路。」


祠の空気が張り詰める中、ヴェイルが最後の矢を番える。

「選べ、怪盗アルト。俺と共に呪縛を壊すか、過去の囚人として消えるか!」


アルトは深く息を吸い、唇に不敵な笑みを浮かべた。

「怪盗にとって大事なのはな――過去でも呪いでもない。“未来を盗めるかどうか”だ。」


その瞬間、二人の影が激突し、祠を包む光が爆ぜるように広がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ