第二部 第89話 契約の記録と揺れる決意
ルナの涙の青い光は、アルトとファントムを包み込みながらも、静かに脈打っていた。
空間に浮かび上がる映像は、太古の地球と異星の世界を繋ぐ「契約の証」の歴史を映し出す。
「見える……私たちは、ここで選ばれたのか」
アルトの声は低く、胸の奥で震えていた。光の中、彼は自分の過去、孤独、そして裏切りの痛みと向き合う。
ファントムは静かに隣に立ち、影のように寄り添う。
「アルト、あなたの決意が試されている。心の強さだけが、力を制御する鍵になるわ」
クロノスはまだ完全には消えておらず、黒い霧がゆらめきながら二人を包囲する。
その霧の中に潜む影が、二人の過去や恐怖を揺さぶるかのように、幻影となって現れる。
「逃げるな……!」
アルトは拳を固め、胸のルナの涙を握りしめた。青い光が身体を駆け巡り、影の幻影を焼き払う。
「私たちは……まだ終わっていない」
ファントムの声は冷静だが、内側に燃える意志を秘めている。
彼女もまた、ルナの涙が映し出す過去の記録を読み取り、未来の選択を迫られていた。
映像がさらに鮮明になり、かつて契約を交わした異星の使者が語りかける。
「この力を扱う者は、秩序と混沌の狭間に立つ者……選ばれし者のみ」
アルトは一瞬息を呑む。自分がこの試練に立たされている理由、ファントムと共に歩む運命、そして「ルナの涙」が示す使命――すべてがここで繋がり始める。
「……わかった、俺たちのやるべきことは一つだ」
アルトの目が決意に満ちる。
ファントムも頷き、二人の心は青い光の中で一つになった。
影が最後の抵抗を試みる。
だが、二人はもはや恐れず、ルナの涙の力を完全に引き出す準備を整えていた。
「行くわよ、アルト!」
「ああ、共に――!」
青い光と黒い影のぶつかり合いは、次の瞬間、運命の決戦へと突入する――。