第二部 第88話 ルナの涙と揺れる記憶
青い光が広間を支配する中、アルトとファントムは互いの呼吸を合わせ、力を最大限に引き出していた。
しかし、黒い霧の中心でクロノスは、まだ消えてはいなかった。
「なるほど……力の共鳴か。だが、それで十分だと思うなよ」
彼の声が、空間を震わせる。黒い霧の渦が再び動き、鋭い影が二人に向かって飛びかかる。
アルトは咄嗟に光を盾にして防ぎ、ファントムは影を切り裂く刃を振るう。
「……このままでは、長引くわね」
ファントムの声は冷静だが、どこか緊張感を帯びていた。
ルナの涙が胸で微かに振動し、アルトの記憶に断片的な映像が映し出される。
太古の宇宙、異星の存在、人類と交わされた契約……青い光が示す過去の記録。
「見えるか?これが……ルナの涙の本当の力だ」
ファントムがそっと囁く。
アルトはうなずき、胸にある光をさらに集中させる。
影が再び迫る瞬間、アルトとファントムの心が完全に一つになり、光の渦が黒い霧を引き裂いた。
その隙間から、クロノスの輪郭が揺らぎ、かすかに表情が見える。
「……くっ、ここまでとは……」
彼の声は焦燥に満ち、力が完全には支配できない様子があった。
ファントムが光の刃をアルトと連動させ、青い光を一点に集める。
「さあ、アルト……最後まで力を合わせるわよ」
アルトは拳を固め、ルナの涙の力を引き出す。
青い光がさらに輝き、空間のすべてを包み込む。
黒い霧はもはや逆らえず、後退を余儀なくされた。
「……これが、私たちの答えだ」
ファントムの瞳が輝き、アルトの胸には希望と決意が満ちる。
だが、戦いはまだ完全には終わっていない。
ルナの涙の記録は、まだすべてを語ってはいなかった――。