第二部 第87話 黒の反撃と青の絆
広間中を支配する黒い霧が、二人の光に押されて薄れたかと思うと、再びうねりながら形を変えた。
その中心に、クロノスの姿が浮かぶ。
顔は見えないが、漆黒のマントの裾が床に影を落とす。
「まだ足りぬ……お前たちの力では、この秩序を変えられん」
クロノスの声は低く、どこか虚ろで冷たい。
ファントムが光の刃を構え、アルトの隣で静かに囁く。
「アルト……今度は私たち二人で――共鳴を最大まで高めるのよ」
アルトは頷き、ルナの涙を胸に押し当てる。
青い光が体中を駆け巡り、微細な振動が手足に伝わる。
「行くぞ、ファントム。お前となら……力を合わせられる」
二人の心が一瞬で通じ合い、光は渦巻く風のように広間を覆う。
その衝撃で、黒い霧が鋭く裂け、クロノスの姿が一瞬だけ露わになる。
しかし、彼はすぐに霧と一体化し、再び姿を消した。
「影の力……恐ろしいわ」
ファントムが冷静に分析する。
「でも、ルナの涙と私たちの共鳴で、まだ押せる」
アルトは拳を握りしめ、光を一点に集中させる。
「俺たちの信念を示す時だ……!」
二人の力がぶつかり合う中心で、青い光は強く、鮮やかに広がった。
黒い霧は抵抗しながらも、徐々に後退を始める。
その瞬間、ファントムの瞳にわずかな笑みが浮かぶ。
「やっと、あなたと同じ未来を見られる……」
青と黒の戦いは、まだ終わらない。しかし、アルトとファントムは確かに、共に歩む道を切り開きつつあった。