表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/206

第二部 第85話 黒の管理者

広間を覆う黒い霧は、まるで生き物のようにうねり、ルナの涙の青い光を押し返そうとしていた。

アルトは結晶を胸元に抱え、息を整える。

ファントムも冷静に視界を走らせ、敵の動きの隙を探す。


「管理者……奴の力、想像以上ね」

ファントムの声は低く、しかし確かな緊張が混じっていた。


黒い霧の中から、仮面の人物がゆっくりと姿を現す。

外套の裾から伸びる影が床を這い、まるで生き物の触手のように蠢いていた。

「我が名は――」仮面の声は広間全体に響き渡る。「――クロノス。時の秩序を守る者だ」


その名を聞き、アルトは一瞬たじろぐ。しかし、すぐに表情を引き締めた。

「……クロノスか。覚えておけ、俺たちは“選ばれた者”だ。ルナの涙を、誰にも渡さない」


ファントムは横で手を握りしめる。

「アルト……無理はしないで。あの結晶の力は制御できる者だけが扱える。無闇に闘えば、二人とも取り返しのつかないことに……」


だがアルトの瞳は決意に燃えていた。

「……大丈夫だ。俺たちには信念がある」


その瞬間、ルナの涙が強く光り、青い光の柱が天井に向かって伸びる。

その光に触れた黒い霧は裂け、クロノスの姿がさらに際立った。

「ほう……選ばれた者か。だが、その覚悟だけでは秩序を動かすには足りぬ」


アルトは片手で結晶を掲げ、もう片方の手で小型の盗賊用装置を握った。

「ならば、実力で示すしかないな」


ファントムもすぐに身を翻し、影の中から忍び寄る。

「私も一緒に行くわ。二人なら、力を合わせれば……!」


青と黒がぶつかり合い、広間の空気は震え、光と影の渦が生まれる。

ルナの涙は震えながらアルトの意志を映し出し、クロノスの黒き霧は世界の秩序を押し付けようと迫る。


その瞬間、アルトの耳にかすかな声が届いた――


「覚悟を決めろ。選ばれし者よ、力を解き放て」


アルトは深く息を吸い込み、ファントムの目を見る。

「……行くぞ、ファントム」

「ええ、アルト」


二人は同時に一歩前へ踏み出した。

青と黒の衝突が、ついに広間を震わせる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ