第二部 第75話 ルナの共
結晶が深い青光を放ち始めた瞬間、アルトとファントムの心臓は同じ鼓動で鳴り響いた。
二人の間に透明な波紋が走り、空間全体が震えだす。
「これは……共鳴?」ファントムが目を見開く。
「いや、違う……これは選別だ」アルトは結晶を見据えた。
ルナの涙は、ただ二人の力を認めているのではなかった。どちらが真に“選ばれし者”かを測ろうとしていた。
光が二人を包み込み、それぞれの「未来の幻影」が目の前に映し出される。
アルトの幻影には、都市を自由に駆ける姿が映る。だがその背後には、数えきれないほどの敵影と孤独が付き纏っていた。
ファントムの幻影には、かつて失った者たちを守り抜き、新たな秩序を築き上げる姿が映る。だがその瞳には、冷酷な支配者の光が宿っていた。
「私たちは……互いに相容れない未来を見せられているのね」
ファントムの声は震えていた。
アルトは苦笑する。「面白いじゃないか。未来なんて、盗んじまえば変えられる」
その瞬間、二人の幻影が激突し、空間が裂ける。ルナの涙は鋭い音を立て、二人の心を試すように揺らめいた。
影の操作者が再び声を発する。
「一つの真実に至るのは、ただ一人。選ばれし者は誰か……今こそ証明せよ」
空間が崩壊を始め、青い光が嵐のように吹き荒れる。
アルトとファントムは互いに視線を交わした。そこには敵意ではなく、確かな覚悟と信頼が宿っていた。
「……面白い。なら、答えを盗みに行こう」
「ええ、どちらかが倒れるとしても――進むしかないわ」
二人は同時にルナの涙へと手を伸ばす。
結晶は悲鳴のような共鳴音を響かせ、ついに“選別の最終段階”へ突入した。