第二部 第74話 結晶の試練
青い光がアルトとファントムを包み込む。周囲の空気は重く、まるで時間そのものが止まったかのようだ。影の操作者の姿は濃くなるが、依然として顔は見えない。
「心を試す……だと?」アルトが低く呟く。
ファントムは冷静に言った。「そう。ルナの涙は選ばれし者にしか力を見せない。私たちはその条件に立ち向かう必要があるわ」
光が二人を分け、異なる幻影の世界に引き込む。アルトの目の前には、幼い頃の家族の光景が広がる。温かく見えるが、どこか冷たさも感じる。母の微笑み、父の厳しい眼差し。過去の記憶が生々しく迫り、心の奥底に封じ込めた感情が揺さぶられる。
「これは……過去の試練か」アルトは拳を握りしめる。
一方、ファントムの周囲には、かつて裏社会で彼女が失ったものたちが幻影として現れる。家族の争い、孤独、裏切り……そしてルナの涙を追い求める自らの決意の軌跡。
「逃げるな、向き合え」影の操作者の声が響く。
アルトとファントムはそれぞれ、自分の過去と痛み、そして本当の目的に直面する。影が迫り、心を揺さぶるが、二人は決して後退しない。
やがて、二人の視界は光と影の渦に飲まれ、結晶の核心へと導かれる。ルナの涙が微かに輝き、二人の心の強さを感じ取ったかのように反応する。
「……もうすぐ、この試練は終わる」ファントムが囁く。
アルトは頷き、握った手の結晶を見つめる。影の渦が解け始め、光が安定していく。二人は自分たちの心の奥底にある真実を見つめ直し、ルナの涙に触れる準備を整えるのだった。