表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/206

第二部 第72話 迫る影と囁き

部屋を満たしていた青い光が徐々に消え、アルトとファントムは互いに息を整えた。

だが、その静寂は長くは続かなかった。


壁の隙間、天井の梁、床の影――微細な黒が再び動き始める。

「……またか」アルトの声は低く、緊張が混じる。


影はゆっくりと形を取り、人間の姿に近づいてくる。だが、その輪郭は不定形で、何重にも折り重なった存在のようだ。

ファントムは眉をひそめ、慎重に観察した。

「これは……結晶の力だけじゃない。誰かが影を操作している。」


影の中心から、かすかな囁きが聞こえた。

「……ルナの涙……力を、返せ……」


アルトは結晶を握り直す。

「誰だ……!」

だが答えはなく、囁きは部屋の中を巡るだけだった。


ファントムは静かにアルトの肩に手を置く。

「冷静に。感情で動けば、影は増えるだけ。」

アルトは深呼吸し、心を一点に集中させた。

その瞬間、影は微かに怯むように動きを止め、囁きも小さくなった。


「ルナの涙……それは、ただの宝石じゃない。」ファントムの声は低く響く。

「未知の力と、選ばれし者だけに反応する結晶。操る者次第で、善にも悪にもなる。」


アルトは結晶を見つめながら、影に向かって問いかけた。

「お前は……何者だ? 何のために俺たちを試す?」


影は一瞬、光を反射するように青く輝き、そして消えた。

「……まだ、答えは出ない」ファントムはつぶやく。

「でも、この影の存在が示すのは……私たちが次の段階へ進まなければならないということ。」


アルトは結晶を胸に抱き、決意を新たにした。

「次が来るなら、俺たちは受けて立つ。どんな試練でも、必ず乗り越えてやる。」


部屋の中は再び静寂に包まれたが、外の世界では、見えない者たちの影が二人を見守り、次なる動きを待っていた――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ