表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/206

第二部 第62話 最後の扉

無数の星々が瞬く中、アルトとファントムは光の門の前に立っていた。

その門は生き物のように脈動し、まるで二人を試すかのように震えている。


「ここが……最後の試練か。」

アルトは深く息を吸い、胸に手を当てた。

《ルナの涙》は強烈な光を放ち、まるで門と共鳴しているかのようだった。


門の表面に映し出されたのは、幾千もの「未来の断片」。

戦争に呑まれた世界、秩序に縛られた世界、誰もが笑顔で暮らす世界……。

そしてそのどれにも、アルトの姿がある。

英雄として讃えられるものもあれば、反逆者として断罪されるものもあった。


ファントムが静かに言った。

「最後の扉は、未来の選択だ。

 アルト……お前は何を盗み、何を残す?」


アルトはしばし黙り込み、門に映る数え切れない未来を見つめた。

――もしも正義の未来を選べば、多くが救われるだろう。

――もしも力を選べば、自分は誰も寄せつけぬ存在となる。

――もしも無に帰す未来を選べば、世界そのものがリセットされる。


だが、アルトは首を振った。

「どの未来も、俺が決めるべきものじゃない。」


その声は迷いを越えた響きを持っていた。

「俺が盗むのは――“選択肢”そのものだ。

 決められた未来を盗んで、誰も縛られない未来を隠してやる。」


その言葉に呼応するように、《ルナの涙》が蒼い閃光を放つ。

未来の断片が砕け散り、門そのものが大きく揺れた。


だがその瞬間、門の奥から巨大な影が現れた。

それは人の形をした“巨像”で、幾千の未来の欠片が寄り集まって形成された存在だった。


「未来を盗むことなど許されぬ。

 定めを破壊する者よ――ここで消えよ。」


巨像の声が空間を震わせ、数百もの光の剣が一斉にアルトへと突き刺さる。


アルトはナイフを構え、低く笑った。

「そう来なくちゃな。」


ファントムもその隣でマントを翻す。

「最後の仕事だ。共に盗み切ろうぜ、アルト。」


二人は同時に駆け出した。

光の剣と闇の刃が交錯する。

未来を守ろうとする巨像と、未来を盗もうとする怪盗。

最後の決戦が、星々の下で始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ