表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/206

第二部 第55話 虚無を裂く光

青白い光に包まれた回廊の中で、アルトとファントムの足取りは確かだった。

だが、彼らの前方に広がる空間は突如として揺らぎ、歪んだ影がせり上がるように現れた。


「……またか」アルトは低く息を吐いた。

黒い影――虚無から滲み出した存在。輪郭は人の形を模しているが、目も口もなく、ただ空間そのものを喰らうように蠢いている。


ファントムが結晶を握ると、光の波が二人を中心に広がった。

「奴らは“契約”を乱す残滓。ルナの涙が共鳴しているのは、その証拠よ」


影は無数に生まれ、壁や天井を伝いながら襲いかかる。

アルトは結晶を胸にかざし、心の奥で強く念じた。

その瞬間、光の刃が彼の腕から放たれ、影の一体を一閃で消し去った。


「……思ったより、制御できてるな」

アルトの呟きに、ファントムはわずかに笑みを浮かべる。

「いいえ、あなたの意志が強いから。結晶はそれに応じてるだけ」


しかし影は止まらない。数が減るどころか、虚無の裂け目から次々と湧き出していた。


アルトは額に汗を滲ませながらも、結晶の輝きをさらに高める。

「このままじゃ埒が明かない……ファントム、同調を!」


彼女は即座に理解し、アルトの手に自分の手を重ねた。

二人の心臓の鼓動が重なり、ルナの涙は激しく脈動する。


――ドン、と空気が震えた。


回廊全体が白銀の光に包まれ、影たちは次々と弾け飛ぶように消えていった。

虚無に裂け目が生じ、黒の空洞がゆっくりと閉じていく。


静寂が訪れると、二人は肩で息をしながら互いを見た。


「……今のは、危なかったな」アルトが言うと、

ファントムは小さく首を振った。「危険はこれからよ。虚無はただの“前触れ”に過ぎない」


アルトは拳を握りしめ、青白い光を見つめた。

「なら、進むしかない。あの扉の先に、全ての答えがある」


二人は回廊の最奥にそびえる巨大な扉へと歩みを進める。

その表面には、古代の紋様とともに、見覚えのある文言が刻まれていた。


――“契約の証を掲げし者よ、選択の時は近い”


アルトは無言のまま、ルナの涙を強く握りしめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ