さ、さ、さ、さ、さ、さしみ!?!?
「まだなの〜?」
「マイル、まだ出航してから2時間しか経ってないよ?」
「だってさ、最初はいい景色ーとか思ってたけど……ずっと続くなんて思わないじゃんか〜」
「あらあら、今まで陸続きだったからいいじゃないの〜」
「セシル〜」
「ジークとハルちゃんを見習ったら? ジークはこの船を運航してる乗組員の人たちといつの間にか仲良くなって魚をいくつか貰ってるよ」
「ハルちゃんはジークの手伝いか、いい子だね!」
「アルカさぁ〜ん」
「マイルちゃん、よしよし。 じゃあここはいっちょお姉さんが一肌脱ぐかな!」
女性チームはアルカさんが持ってきたトランプで遊び始めた。
ルインは軽い船酔い状態になっていたため自室に行ってログアウトした。
ゲーム内でもそういった症状にはなるもんなんだな。
リオンはやることがないからと言って自室にひきこもって筋トレをするって言ってた。
やはり筋肉バカはどこにいってもバカだったか。
俺はアルカさんから椅子を貰ってボーッと海を眺めてる。
たまに海の生き物が海面から飛び出てくるのを見たり、無人島を眺めてみたり、揺れる波をただただ見ていたり……様々だ。
やることが無いのは認める。
本当に暇だから。
でもセシルの言う通り陸続きだったからこうして他の景色を見るだけでも心が安らぐ気になる。
海は静かでいい。
程よい風がこれまた心地いい。
空は快晴だけど暑すぎない。
陽の光を浴びながらそよ風を感じつつ目を閉じると……もう寝てしまいそうだ。
「お兄ちゃん」
「んーどした、ハル」
「こっちきて」
「いいよー」
言われた通りハルに着いていく。
「これは……まさか!!」
「これ、美味しいよ。 お兄ちゃん」
「おう、来たか! ハク、これはいいぞ」
そう、俺の目の前にはジークが並べていた刺身があった!!
「刺身なんて……食べられるのか」
「私も手伝ったんだ」
「ハル手伝ったのか! 偉いな〜」
そう言いながらハルの頭を撫でてあげるとハルは笑顔になった。
本当に可愛いんだよな。
「ハルは本当に可愛いんだから、後でお小遣いあげちゃう」
「ううん、大丈夫。 でも大和に着いたらお願いしてもいい?」
「何でも言う事聞いちゃうぞ、配達から抹殺まで任せろ」
「あのね……一緒に色々見て回りたいな」
「任せろ!! どこにでも連れてってやるぞ!」
「うん! ありがと!」
「なぁ、ハク。 刺身には勿論コレつけるよな?」
そう言ってジークが懐から取り出したのは1つの瓶だった。
小皿にその中身を垂らす。
瓶から出てきた液体は黒かった。
「醤油か!!」
「大和には醤油や味噌等そういった和の調味料があるらしいぜ。 ちょうど乗組員の1人が持っててな、分けてもらったとこだ」
「それは色々楽しみが増えるな。 それより食べてもいいのか?」
「あぁ、いいぜ。 ハルのお手製だ」
「いただくな、ハル」
「うん、どーぞ!」
白身の刺身を一切れ箸で掴み取る。
ジークが取り出した醤油に少し付けてそのまま口に放り込む。
「うまい!!」
「だろだろ」
「お兄ちゃん、美味しかった?」
「おう、美味かったぞ。 ハルは将来いいお嫁さんになりそうだな」
「俺もやっぱりリアルには劣るって思ってたんだが、いざ食べてみればそんなことなくってよ。 全然美味いのなんのってな!」
「いやーいいもんだ」
各自ワイワイして数時間経った。
和食