01.少女は地獄で恐怖する
⚠️ 暴力描写あり
「おい!お前何やってんだよ!!!」
彼女は床に伏せていた。
くすんだ黒髪が力なく床に落ち、その小さな体の上に体格の良い青年が覆いかぶさっている。
苦しそうに喘ぐ彼女の事を気にもとめず、青年は彼の顔を殴った。彼女の顔が歪み、歯と歯の間から赤黒い血が流れ出す。
しかし、彼を止めるものは誰も居ない。職員でさえも、同じ孤児でさえも。あたかも何も起きていないかのように。
歪み切った職員と孤児が陰謀を張り巡らす場所、それがこのユール・ノベル孤児院だった。
「お前のようなクズが、俺様に逆らうんじゃねぇよ!誰にも必要とされていないお前と、誰からも大切にされる俺とじゃ何もかも違うんだぞ!分かってんのか?!」
辺りにツバを飛び散らかせながら怒鳴る青年。
しかし行き過ぎた暴力を振るう彼を止めるものはやはり誰も居ない。
青年の言う通り、彼女は「いらない」からだ。
不気味な髪色、やせ細った体、ぎょろぎょろとした黒い目。全てがこの世の不吉と不幸を詰め込んだかのように醜い。
お金が全てのこの世界では見た目は重要な要素だ。それが劣る彼女はこの孤児院の穀潰しであり「必要ない」
彼女はその事を分かっていた。だから抵抗しない。それが自分の運命だと、彼女は受け入れていたのだ。
そう、あの日まではーーーー
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