席替え
恋。それはピンク色の感情。
胡桃てるは、今恋をしている。
無意識にその人に向く自分の視線は、素直に可愛い。
恋しているんだと実感できる。
「わぁ~。いい」
恋している相手を眺めながらぼそりと呟く私。
「何がいいの?」
「え!?」
こやつ。いつからいた。
「る、るい。いつからいたの?」
「いつからって、てるが『わぁ~。いい』とか一人で変なこと言ってた時から」
「ガーン」
この少女の名前は光里るい。私の親友。
「また黒田君のこと見てたの~?」
黒田君という男子生徒が私の恋の相手だ。
こやつ。からかいに来たな。
「そうですけど~。悪いですか~?」
こうなったら開き直ってやる。
「別に悪いなんて一言も言ってないけどね。ふふっ」
るいの奴。楽しそうだ。
「じゃあ、からかわないで!」
「はいはーい」
口笛を鳴らしながら自分の席に戻って行くるい。
全くるいはからかうの大好きなんだから。
「みんな席につけ」
先生の指示に素直に従う生徒たち。
みんなが座ったのを確認すると、早速話を始めた。
「えーっと。席替えをする」
その瞬間、クラス中が歓喜に満ち溢れた。
学生からしたら喜ばしいイベントなんだから無理もない。
「今回はくじ引きで決めることにする」
くじ引きか。黒田君と近くの席になれるかな。なれたら嬉しいなぁ。
今のうちに神に願っておく。
それで、黒田君の様子はというと......
「わぁ~。かっこいい」
席替えに興味も示さず、読書をしている。
そんな彼の姿でもカッコよく見えてしまう。病気かも。
「それじゃ、一番前の席から順にくじを引きに来い」
先生の指示通りくじ引きが始まった。
こうしている間も、胸がドクンドクン言ってる。
やがて私の番がやって来る。
「お願いします神様!どうか私に力を貸してください!南無阿弥陀仏!」
「いいから早く引け胡桃。それに何だ南無阿弥陀仏って。ここで使う言葉じゃないだろ」
「あ、すみません。あはは」
我に返った私はそのままくじを引く。
そしてプランA開始!
自分の席に戻る途中。黒田君の席を通ることで、彼の番号が確認できるのだ!
「一八番か。よしっ!」
黒田君の番号は一八。私は二四を引けば、隣の席決定だ。
「神様!私に力を~!」
そんな雄たけびと同時に、番号を確認した。
数分後
「これで席替えを終わる。これからは当分席替えはしないつもりだから、今の席で頑張りたまえ」
先生の言葉に心を抉られる。グ八ッ......。
「うううぅぅぅ」
涙が出て来た。
望み通りの結果とは言えないからだ。
「まあまあ落ち込むなって!私と席が近いんだよ!良かったじゃん!」
るいの励ましの言葉は耳に入って通り過ぎる。
るいは私の左斜め後ろ。るいとこんなに近くなるとは思わなかった。
とっても嬉しい......なわけあるかぁ!
この状況では素直に喜べない。
悔しさを胸に抱えながら、そっと後ろを振り返る。
「よっ」
「く、く、く、く黒田君」
目が合って『よっ』だけか......。悲しい。
隣ではなく、後ろに黒田君。黒田君の隣にるい。黒田君の前に私。番号で言うと、私が十七、るいが二四で黒田君が一八という結果になってしまった。
「る~い~!」
縋るようにるいに飛びつく。
「おぉ!どうしたてる!急に甘えたくなったか?」
「ち・が・う!」
「え?」
「るいのバカバカ!」
「私なんかした!?」
「した!」
るいの頭をポコポコ叩く。
そしてるいは、何かに勘づいたようにニヤリと笑った。
「あははははは!そういうことね!あははははは!」
笑いすぎだ。
「もぉ~」
「大丈夫だよてる!私は取らないから!」
謎のウインク。可愛いから許す。
でも、
「こんなところで、そんなこと言うなぁ~!」
こんな感じで、私の高校生活はまだまだ続きそうです。あはは。
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