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マンチェスターに向かって  作者: タカハシ
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夢の挫折

 走る、走る。

 

 7時14分発の電車に乗りたい。この電車に乗り過ごしてしまうと次の電車は10分以上後になってしまう。今日は他社でのプレゼンがあり、それに使う機材等の最終準備をしたかったのでどうしてもその電車に乗りたかった。地面をつくたびに右膝がズキンと痛む。


 


 自分は小学生の頃から夢の劇場「オールドトラッフォード」でのプレーを夢見てきた。主にサイドバックとしてプレーをし、小学校では初めて2年後に国の年代別の代表選抜に選ばれ、中学校では全国大会に出場しベスト4で負けてしまったものの豊富な運動量、硬い守備、正確なクロスを武器とし自分でも言うのもなんだが将来を嘱望をされていたと思う。


 高校生になると県内、国内でも有数なサッカー強豪校に進学した。1年の頃はBチームだったが2年生になるともう少しでAチームに上がれるというような手応えはあった。2年の時のある練習試合自分で右サイドバックでスタメンとして出場していた。後半14分、自分はハイボールを相手のフォワードの選手と競った。自分が着地したあとタイミングがずれてジャンプしてきた相手の選手がバランスを崩し自分の右足に乗った。そのプレーにより自分はグラウンドに叩きつけられ、右膝の前十字靭帯断裂、全治1年半の大怪我を負ってしまった。医師の診断では体が成長期で身体が未発達であるということもあり、無理して運動すればその後の人生でも歩行障害が残ってしまうと診断され、自分の選手生命は断たれてしまった。その後はサッカー部を退部、何もせず高校を卒業し普通大学に進学した。



 

 なんとか狙っていた電車に乗ることができた。右膝は未だに悲鳴を上げていて、呼吸も整うまで時間がかかった。そこには猛烈に右サイドを駆け上がっていく勇猛な選手であったことを想像できるものはいないだろう。それほどまでに怪我のダメージは大きく身体的にもまた精神的にもまだ尾を引いていた。

 


電車に20分ほど揺られ、仙台駅から5分ほど歩くと自分が勤めている会社がある。

「おはようございます」

「おはよう」

藤村が挨拶してきた。

「先輩どうしたんですか、そんなに汗だくで」

「今日いつもより早かったこと忘れてて、駅まで走ったんだよ」

「お疲れ様です」

その後も後輩との他愛もない会話を終えてプレゼンの準備を始めた。



オールドトラッフォード…イングランドのプロサッカーチーム、マンチェスターユナイテッドのホームスタジアム。収容人数約75000人。数々の名試合が行われてきた。


サイドバック…左右両サイドに位置するディフェンダーのこと。サイドにおける守備を主な役割とすし、攻撃時には中盤の選手を追い越して前線に駆け上がり、ドリブルで切り込んだりクロスボールを上げたりする。


クロス…フィールド左右の敵陣深い位置(ペナルティエリア付近)からゴール前を狙ってロングパスを蹴ること。センタリングとも言う。

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