塩対応王太子と気味悪がられた婚約者
残酷な描写に入るか分からないんですけど、怪我とかダメな人はお気をつけください。
相変わらずキーワードがどれを選んで良いのか分からなくてヒストリカルにしたけど、ヒストリカルって何?(
エリザベスは公爵令嬢ではあったが、見た目もそれほど整ってはおらず、また社交的でもなかった。ただ、その魔力量の高さを見込まれて王太子であるセドリックの婚約者となったのだった。
「確かにこの国では建国以来、魔力が重要視されていますが、私のような者でもよろしいのでしょうか…」
そもそもこの国は魔族を退け人々を守った勇者が王となって建国した経緯がある。
その流れもあって、力が尊ばれる。魔力に限らないが、エリザベスのそれは他を圧倒していたのだ。
「嫌なのであれば、そのように伝えてくれれば対処しよう」
「いえ、私の方はありがたい事この上ないお話ですが…」
「ならば良かった」
そう言うセドリックは表情もなく、視線もどこかこちらを見てすらいない様子で、エリザベスに興味があるのかどうかすら怪しいと言う感じだった。
もともと王太子は子供の頃から他人に興味がないらしいと言う噂はあったし、どんなに可愛らしい令嬢であろうと表情一つ変えなかったと言う。
王子の外観自体はかなり整っていて、背は高く顔の作りも美しかった。
ただただ、表情が作り物のようでその目に感情が感じられなかった。
でも、私のことを嫌がっている様子もないわね…
エリザベスはと言えば猫背で太り気味、髪も痛んでいた。
常に書庫に籠って本を読んでいるような娘だった。
そんな2人だったが特にこれと言って話をするでもないが、時間があれば一緒に過ごす様子が見られるようになる。
初めのうちはあまりにも不釣り合いな2人だったため、悪く言う者は居たもののこれと言った事件はなかった。
「殿下のおっしゃる通りですね…」
新しいドレスを作るために採寸することになった時、担当に言われた。
「はて、殿下はなんと?」
あの殿下も容姿について人に話したりするのかと言う思いと、やはり悪く言われたりしたのだろうかと心配になる。
「背が高いのを気にしていらっしゃるのか縮こまりがちですが、かなりプロポーションの良い方だと。いえ、そんなあからさまな言い方ではありませんでしたが、意味合い的に」
「そんな…」
たんに本ばかり読んでいたから猫背になったとは言いづらい。
家族からも気持ち悪い娘だと煙たがられていたから、あまり人前に出ることもなかったのだ。
たまたまほぼ強制で出された会で王太子に見初められると言う謎のミラクルでワンダーな事が無ければ、そもそも結婚する事自体なかっただろう。と言うか、なぜあの場で魔力量が分かったのだろうか。謎すぎる。
流石に王太子の婚約者と言う立場になったので、教育やら何やらで磨かれることになった。
知識はほぼ問題なし。何気に広い書庫で巨大な革の本を読みあさっていたせいか、身体は丈夫で発育も良かった。
侍女に寄ってたかって磨かれた結果、長身で鍛え上げられた身体の殿下と並んでも見劣りしない身体になった。
「顔は、まあ化粧による変装というか、特殊メイクと言っても良いような気もするけど、それでもなんとか殿下の隣にならんでもおかしくない程度には加工された?…」
「何を仰いますか。初めてこちらにいらっしゃった頃に比べても驚くほど変わられましたよ?」
侍女の言葉はお世辞でもなんでもなく、マッサージなどで余計な脂肪も取れたし浮腫みも解消され、だいぶ細っそりしたし、顔色も肌艶も良くなっていた。何より目の下の隈がなくなった事でかなり印象が良くなっている。
傷み放題だった髪も艶やかでサラサラになっていた。
だいぶ周りの見る目が変わってきていたことには気がついていたが、殿下は相変わらず塩対応だった。興味がないのかなんなのかは分からないが、相変わらず落ち着いた関係は続いていたし、エリザベスはこの関係を気に入っていた。
「エリザベス、無事か?」
珍しく慌てた様子の殿下が医務室に駆け込んできた。
その割に、顔は相変わらず感情の感じられない素っ気ない顔だった。
「どうやら劇薬の入った瓶を投げつけられた様です。容疑者は既に拘束済みです」
「そうか」
医者が代わりに返答した。
エリザベスはと言うと、顔の半分を包帯で覆ってる状態で、ベッドに腰掛けていた。
さすがに殿下の訪問に寝ているわけにはいかない。
「焼けた髪の毛は生え変わりますが、顔は元に戻らないそうです。目は様子を見てみないと分からないと…」
侍女が小声で殿下に伝えるのが聞こえて来た。
辛い話をさせて申し訳ない。
「すまない、こちらの不手際だ」
「お気になさらないでください」
下手に小綺麗になった事で返って反感を買ってしまった様で、どこかの令嬢が雇ったと思われる暴漢に襲われたのだ。おそらく金に困った貧民か、裏社会の末端だろう。大元を特定するのは難しいのではないだろうか。
「あの、殿下、婚約の…」
「それはっ、いや、やはりこの様な事が起こっては引き止めるのは酷か…」
「いえ、私は大丈夫ですが、この顔では公務も難しいですし、殿下もお気に召さないでしょう…」
「公務は、なんとかする。………。気がついているかもしれないが、私は目が見えないから見た目は正直気にしない。や、私が気にする気にしないの問題ではないか。いや、しかし…」
「え? 殿下は目が見えないのですか?」
「ああ、生まれつきだ。ただ、洗礼の時に魔眼とでも呼べるようなスキルを授かったから、普通に目が見えるより便利なぐらいらしい。文字も見えると言うか、書類など一瞬で内容が把握できたりするんだが、人の顔貌や表情は分からないんだ」
「顔が、分からない、ですか」
「そうだ。笑うとどんな顔になるのかとか、私には分からない。だから自分もどんな顔をするのか分からず、訓練して身に付けた『無難な顔』しか出来ないんだ」
「そうだったのですね」
「すまない」
「何に対する謝罪か分かりませんが、秘密にしていたことに関してならば、私もありますのでお相子です」
「え?」
「私は人の感情が色に感じる力を持っています。例えば、楽しいと思っている人を見ると黄色、悲しいと思っている人を見ると青、みたいな感じです」
「人がその色で見えると?」
「いえ、どう表現して良いのか分からないのですが、人を注意深く見た時に頭の中に「この人は今黄色」と言う様な閃きがあるのです。目に見えるわけでもないのに、なぜ色に感じるのかは分かりませんけども、なので、顔で笑っていても心で泣いている方などが分かってしまって、だいぶ気味悪がられたりしました」
「相手の嘘が見抜ける、と言うことか」
「考えている事までは分かりませんから、嘘が見抜けるとまでは言い切れませんが、表情が少ない方の感情がざっとですが分かります」
「そうか。私が理解してもらえていると感じていたのは間違いではなかったのだな」
「すみません」
「ふっ、なんの謝罪か分からんな」
「そうですね。ふふふ」
その後、セドリックの指示でエリザベスと特別仲の良い侍女以外全て入れ替えになったと言う。
もちろん、残った侍女たちの身元なども入念に調べられた上でだが。
護衛の騎士も何名か取り調べられているらしい。
エリザベスが失墜した場合に王太子妃になれる可能性のある令嬢やその一族郎党が取り調べを受け始めて半年になるらしい。何人かは三ヶ月ほどで自害したとか。
それでも捜査の手が緩められることはないらしいと国中で噂されていた。
結局、エリザベスの顔には火傷の後が残り左目は失明してしまったが、治療が終わり落ち着いた頃に婚姻の儀が執り行われた。
公務に出る際には、魔法の如きメイクによってそれほど気にならない程度にまで隠されたが、普段は気に留めることのない者以外は立ち入れない場所で過ごした。
2人の高い魔力は子供たちにも受け継がれたが、それは決して人を傷つけたりするものではなく、国を豊かにすることに貢献するのだった。
「陛下は今日も真っ黄色ですね」
「誰のせいかな」
2人にしか分からない話で笑い合うのだった。
日本ってもともと指が4本しかない生物とかも拒否られたりするっぽいので、女の子の顔に傷が残るとかどうなのかなとか思ったけど、内容的にすっきり治って問題なしって言うのも意味不明なのでこんな感じになりましたが、どうなんですかね