side奈津 どうしたら
◇◇◇◇◇
「……はぁはぁっ」
アタシは廊下をひた走る。驚いた。ゴンが声を出したから。今まで出なかった声を。でもその内容は――。
『俺、に……構、う……なよ』
アタシに対する拒絶の言葉だった。なんで……ゴン、なんでそんな事言うのよっ。そう聞けばよかったのにアタシはその言葉を聞いて逃げ出した。久々に聞こえたゴンの声なのに。アタシはゴンの言葉に胸が辛くなって耐えられなくなって逃げた。
あの言葉……。きっとアタシがどういうつもりで接してきてるんだ? という意味だ。そうだよね。だってアタシは本当はゴンに関わる資格なんてない。今のゴンにしたのはアタシだ。たった1人の友達であるゴンを裏切ってしまったから。
「……っ」
気付けばアタシは病院から出て近くの公園の前で転んだ。地面は雪に覆われていて痛くはなかったけど冷たい。うぅ……流石に冬に生足は辛いな。顔を上げると道行く人々がアタシをチラチラ見ながら去っていく。
アタシは恥ずかしい気持ちに若干駆られながらその場を立ち上がり膝に付いた雪を払う。そして家に向けて歩きだす。そしてアタシはさっきの事を思い返す。久々に声を聞こえたと思ったら拒絶の言葉だったなんて。
どうしたら許してもらえるの? いや許してなんて貰えるわけない。あれから6年もの月日が経ってる。その溝は簡単に埋められるものじゃない。
「そんな時期なんてもうとっくに過ぎてるわよ……」
言葉に出してアタシの胸がギュッと締め付けられる。分かってる。1度壊れたものをまた築き上げるのは難しいことだって。でも叶うことなら。アタシはもう1度ゴンと親友だった頃に戻りたい。
「でも無理だよね……」
空から舞い降りてきた小粒の雪がアタシの身体に触れると同時にすぅっと消える。最初から何も無かったかのように。アタシもゴンとこんなふうに何も無かったかのように関わらなければ良いのかな? でもそんな事絶対にしたくない。でももう無理なのかも……。
分かるんだ。ゴンがどんな思いであんな事を言ったのか。どういうつもりで関わってきてんだよ、お前にそんな資格なんかねえよ。ゴンはそう思ってる。そう思われて当然なんだ。だってアタシは
――蓮本君が……やりました。
自分の保身の為にたった1人の親友であるゴンを売ったのだから。なんであの時あんな事をしたんだろう。あの言葉を言わなければこんなに拗れる事もなかったのに。なんて
「今更後悔しても遅いじゃん」
アタシは尚も雪を降らせる空を見上げながら言葉を発する。視界が滲むのと同時に頬に冷たくて熱いものが流れた――。




