表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/73

side藜志 姉貴はさ

♤♤♤♤♤


「お前とこうして2人きりでちゃんと話すのは初めてだな」


 俺は蓮本が乗っている車椅子を押して、エレベーターに乗り屋上へとやってきた。屋上は冬場は外に繋がる通路は塞がれていて、エレベーターから出た場所。展望室しか利用出来ない。俺は適当な所に蓮本が乗った車椅子を、これから俺が座る席と向かい合わせる形にセットする。そして俺は椅子に腰掛ける。


「…………」


 蓮本は気まずそうな顔で俺を見てくる。コイツは俺の事が苦手なんだろうな。見た目かなり俺悪いもんな。


「多分、俺がなんでここに来たのかって疑問に思ってんだろうな。今の今まで来てなかったからな」


 実際、蓮本が入院してから姉貴とも会話をする機会が少なくなっていたからな。来よう来ようとは思ってたけど、なかなか行けなかった。第一俺が行く適当な理由がないからな。友達って訳でもねえし。でも


「半年も経っちまったが、姉貴を救ってくれて……ありがとう」


 一応礼は言わねえとな。俺は蓮本に向けて頭を下げる。頭を上げると困惑した表情の蓮本が俺の目に映る。なんで今さらって感じだよな。俺も実際そう思う。実はここに来る気は無かった。蓮本が再び登校するまで会う気が無かったから。

 だけど最近の姉貴の様子がおかしかった。まるで何かに急き立てられてるような感じだった。そして今日いつも通りに帰ろうとしたら、教室に霧華が現れた。霧華が俺の前に立つ。


「なんだよ急に?」


 俺の目の前に現れるなんて珍しい。普段は俺に関わらないようにしてるくせに。それにしては俺の近くに大体居るんだが。


「……久川さんの元に行くわよ」


 姉貴の元に……?


「理由はなんだよ?」


 俺の問い掛けに目を伏せながら霧華は答える。


「なんか最近、久川さんが元気ないみたいだから」


 驚いた。姉貴の事ちゃんと見てんだな。でも霧華が姉貴を気に掛けるメリットが分からん。


「あんな顔してたら、龍君元気になれないと思うから」


 ああそういうことか。霧華は蓮本の事が好きなのか……よく分かんね。


「分かった。なら行くとするか」


 俺も姉貴の事が心配だったから、丁度良い機会だった。とまぁそんな訳で今ここにいる。


「今回来たのは姉貴の件だ」


 俺の言葉を聞くと、急に目を伏せて潮らしい態度に蓮本はなる。ちょっと面白いなコイツ。


「なんか最近元気がねえんだよな。まぁその理由を聞こうと思ったけど今のお前は、喋れないみたいだしな。俺の話を一方的に今日は聞いてもらう」


 俺はそう言って外を見る。上から見下ろす景色は辺り一面白く染まっていて、そこからビルや住宅街が見えた。といっても天辺と底が白く染まってるところが大半だが。


「姉貴はさ。小学1年生まで一緒だった。ここまでは話したよな?」


 俺の言葉に蓮本が頷く。


「あの頃の姉貴はさ、いつも明るかったんだよな。それで弟である俺にいつも優しくて……。その頃の俺は弱くて泣き虫だった」


 本当いつでも金魚のフンみたいに姉貴の後ろをずっと付いて回ってた。懐かしいな。


「でも、離婚して離れ離れになってさ。高校で久々に再会した姉貴は、昔とは全然違ってた。他人に一切興味を持ってない、そんな感じだ。まさかその1年後に180度ガラリと変わるとは思わなかったけどな」


 俺はそこで一旦言葉を区切って蓮本を見つめる。右側だけ髪に覆われていない翡翠色の目を覗き込む。そこには驚きの色が見えた。なんで驚いているのかは分からない。だけど予想は出来る。彼女がそんなふうに見えなかったんじゃないか。


「お前には姉貴を変えさせる何かがあるのかもな。これからも姉貴の事宜しく頼む」


 俺はそう言って頭を下げる。そして頭を上げて「そろそろ帰るか」と言ってまた蓮本の車椅子を押してエレベーターに乗り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ