side日下部 それじゃあ俺は
☓☓☓☓☓
『日下部晶様
拝啓 晶、元気にしているか? と言ってもこれを読むのは私と面会した後だろうからこの切り出しは少し変だな。さてお前に手紙を出したのは全てを打ち明けようと思ったからだ。
お前は蓮本君を恨んでるようだがそれは違う。というのも優恵が襲われてから数日後、優恵と話したんだ。学校を休み続けている優恵を心配して、私は優恵の部屋に行ったんだ。
部屋に入ると優恵はベッドに腰掛けていた。目は虚ろでその瞳は何を見ているか、全く分からなかった。私が話しかけると優恵は何拍か置いて反応した。そして事の真相を聞いた。
まず、優恵を襲ったのは葛刃託斗という男子生徒らしい。廊下を歩いていたら突然襲われたという。そしてその現場に蓮本龍が現れて助けてもらった。優恵はそう言っていた。
そこまで話すと優恵は私を見てこう言ったんだ。もし私の身に何かあったとしても大事にしないで、と。その数週間後優恵が自殺した。お前も知っての通り、首吊り自殺だ。お前や母さんは悲嘆に暮れていたが私はさして、悲しくはなかった。
優恵はずっと耐えていたんだ。クラスの、周りからの理不尽に。だから私は心の中で優恵に言ったよ。お疲れ様と』
「なんだよこれ……」
俺は読み途中だったけどそう呟いた。この手紙に書かれてる事は本当か。それじゃあ俺のした事は……。俺はその考えを頭を振ることによって振り払い再び目を通す。
『実はな。私は優恵を亡くしてからというもの、私は優恵の遺骨が収められた墓に何度も訪れていた。悲しくはなかったのは事実だが、それでも受け入れられなかったんだと思う。そりゃそうだ。娘を失って平気な父親などいるわけないのだから。
そんなある日だ。仕事を終えて優恵の遺骨が収められた墓場に向かうと墓の前に優恵と、優恵と同い年くらいの男の子がいた。その男の子は魂でも抜け落ちたんじゃないかと思うほど、空虚な顔を浮かべていた。俺が彼の前に立つと空虚な瞳がこちらに向けられた。私は悟ったよ。彼が蓮本龍なのだと。
彼は私を見るなり土下座をしてきた。そしてすいませんっすいませんっすいませんっ、と何度も同じ言葉を連呼した。
その光景が狂気に満ちてるように見えたのと同時に私は彼を哀れに思った。事前に優恵に聞いていなかったら、その行為に怒りを覚えていたと思う。彼は自分のせいでもないのに、娘が亡くなった事を知ってから自分を責め続けてきた。そんな風に感じられた。
私は彼の元によって彼の肩に手を置き、君のせいじゃないと声を掛けた。だから土下座をやめなさいと。すると彼は頭を上げると私の胸元を掴んできた。彼の瞳からボロボロと涙が流れ落ちる。彼のその行為は懇願しているかのようだった。
そしてこう言うんだ。でも俺と出会って関わったばかりにこうなってしまった。どうすれば俺は許してもらえもらえますかっと。私はそれを聞いて虚しくなった。この子は自分のせいでも無い事に贖罪を求めている。その行為が歪に感じられた。だから私はもう優恵の事は忘れなさいと言って去った。翌日、墓に行くと彼の姿はなかった。
晶、ここまで見て彼が相当なクズだと思うか? 私には心優しい男の子にしか映らなかった。優恵が前もって教えてくれていたというのもあるが。優恵はこう言っていたよ。蓮本龍は私にとって1番の親友だと。
長くなったが、ここで筆を収めようと思います。またそのうち面会に来ようと思います。それまでくれぐれも身体に気をつけるように。
○○○○年△月☓☓日
日下部祥三』
俺は手紙を読み終えると天井に目を向ける。天井は白くて模様などは一切無かった。なんだよそれ。アイツはクズでもなんでも無かったってのか。
「おい坊主、涙なんか流してどうしたんだ?」
中年の男の言葉を聞いて俺は頬に手を這わせる。濡れていた。ああ涙なんていつ以来だろう。姉さんを亡くしたのを最後に流してなかった気がする。
「――うっ、ぐすっ……うわああぁぁぁっっっ」
俺は周りの人の事も考えずに盛大に泣き叫ぶ。もっと早くに教えて欲しかった。俺のやった事っていったい……。俺はそんな事を思いながら留置所で取り返しのつかない事をしてしまったと後悔しながら泣き叫んだ。




