表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/73

side日下部 結局アンタは

☓☓☓☓☓

「久しぶりだな……」


 面会室に行くと懐かしい顔があった。父さんだ。


「……わざわざ来たのかよ」

「当然だ。お前は私の息子なんだから」


 俺はその言葉に腹が立つ。ふざけるな。姉さんの時は、なにもしなかったくせに。こんな時だけ親面をするなよ。


「さて時間も限られているし……。私の話したい事だけ話す」


 俺は父さんの言葉を聞いて思う。この人は俺の事をただの疫病神と思ってるんだ。自分の立場が危うくなったから、俺の面倒はもう見ないってそう伝えようとしてるんだ。

 俺と父さんの間には横幅一杯のアクリル板がある。そしてちょうどその2人の対面している位置に小さい複数の穴が開いていた。そこで会話をするのだけど聞き取り辛くて、会話が度々途切れる事がしょっちゅうという話だ。事実父さんの声は聞き取り辛かった。


「お前がこんな事をしだす前に話せれば良かった……」


 父さんは目を伏せながら言った。俺は想像していた言葉と違う切り出し方に内心驚く。


「今でも恨んでいると思うが、私が何故蓮本君を訴えなかったのかその理由を話そうと思ってな」


 俺は息を呑む。なんでこのタイミングでそんな事を言うんだよ。


「時間が無いから手短に言うが私はあの日……、優恵が襲われた日の翌日にこう言われたんだ」


――蓮本君を恨まないで。


 俺はその言葉を聞いて頭が真っ白になる。えっ? 何言ってるんだよ。アイツが全てを狂わせた人間だろ。なのになんで……。


「うっ嘘を吐くなっ」


 俺は叫ぶ。そうしないと自分が保てそうになかったから。


「私はその時優恵から彼について様々な事を聞いた。だからこそ私は彼を告訴する気にはなれなかった」


 なのに父さんは俺に構わず言葉を紡ぐ。なんでだよ。俺の静止の言葉に耳を貸さない父さんよりも、1番訳が分からないのは姉さんだ。なんであんなクズを庇うんだよ。そこからはなにも聞こえなかった。父さんがなにか言ってるけど、全く耳に入ってこない。


「……時間です」


 気付けばそんな無機質な声が父さんの近くにいた職員から発せられた。そうか、面会は30分だったっけ。父さんはその言葉を受けて立ち上がる。


「ふぅ。詳しい事は手紙に書いてある。お前になにもないようで安心したよ。お前がどんな処罰になろうと私はお前を待つ。だから……しっかり罪を償ってこい」


 そう言って父さんは面会室から出ていった。なんだよそれ。結局アンタは綺麗事しか言えねえんじゃねえか。俺は心の中でそう毒吐きながら留置所へと戻る。


「おう。おかえり」


 中年の男が俺に明るく声を掛けてきたけど、さっきと同じように無視して隅に腰掛ける。


「80番」


 鉄格子の脇の少扉が開かれる。俺は開かれた方へ行き返事をすると


「手紙が届いている確認しろ」


 と手紙が入った封筒を渡される。すぐに裏を確認する。そこには日下部祥三(くさかべしょうぞう)……父さんの名前が書かれていた。


 そして職員は「間違いないようならこの紙のこの部分に名前を書いてくれ」というと、1枚の紙とペンを渡してくる。俺は言われた通りそこにフルネームで書く。そして手紙を渡し終えると、職員は俺の前から去っていく。

 俺はその封筒から手紙を取り出す。封はどうやらすでに破かれていた。文面に暴力団や暴走族などの反社会的勢力の情報の記載がされていないか、事前にチェックするらしい。内容によっては手紙がこの留置所に入る事は無いらしい。俺は四つ折りにされた紙を広げて目を通す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 父親には本当の事を知らせたのかな? 『娘を酷い目に合わせた』ではなく『なぜ助け出さなかった』と彼を恨まないでくれと [一言] 2人の仲が改善しますように
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ