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俺となっちゃんの出会い

――ゴン。ずっとアタシ達友達だよっ。


 女の子が俺に優しく微笑みながら小学生の頃俺の手を掴む。俺はその光景を見て悟る。これは夢だと。だって俺は今高校生だし、なにより俺の視界に過去の自分が見えるはずがない。俺は女の子を見つめた。そして思い出す。あの女の子の名前が()()()()だった事を。

 綺麗な黒髪を背中のまで伸ばしている。そしてこの時から、彼女は容姿が整っていて目が細かった。俺は改めて気付く。俺が彼女に感じていた懐かしさはこれだったのだと。まさか久川さんがあの時の女の子だったなんて。

 俺の初恋の人であり、人を信用出来なくなった理由を作った張本人。俺はあの頃を思い返す。



『〇〇県〇〇市から来ました久川奈津です。宜しくお願いします』


 これが俺と久川奈津――なっちゃんとの出会いだった。なっちゃんはそう言ってどこか儚げな笑顔を浮かべていた。その笑顔を見て当時小学5年生だった俺はなっちゃんに興味を抱いた。なんでこの子はこんな悲しい顔で笑うんだろう? と。

 それから俺は彼女の事をよく見るようになっていた。なっちゃんは自分から人に話しかけるような事はしなかった。その代わり話し掛けられれば応対はきちんとしていたが、どこか事務的だった。

 そんなある朝学活の時だ。俺となっちゃんが関わる機会が訪れたのは。ある時担任の教師がブレハブ小屋に飼っているウサギの飼育係を決めると言った。

 生徒達は「え〜面倒くさい」と言ってるのが大半だった。飼育係は男女それぞれ1名ずつ。もう10歳にもなると男女間で異性として誰が好き? という色恋沙汰の話がよく飛び交っていたから、余計照れという意味でもやりたくないというか者がほとんどだっただろう。でも


『……はい』


 皆が嫌がってる中で1人手を上げていた。久川奈津だ。彼女の幼くもしっかりとした鈴の音みたいに綺麗な声が、五月蝿い教室の中で響く。それを見た先生が言う。


『よし。女子は久川で決定だ。男子で立候補したい奴はいないか?』


 俺はその言葉に迷わずに手を上げた。久川奈津と関われるチャンスだと思ったんだ。男子は俺以外誰も手を上げなかった。


『よし。今日の放課後からよろしく頼む。詳しい説明葉その時にする』


 その先生の言葉で朝学活がお開きとなる。そして放課後。俺と久川奈津はプレハブ小屋に向かった。いや正確には別々になんだけど。プレハブ小屋に着くと俺より先に久川奈津は着いていた。

 彼女は俺を見るなり笑顔を見せてきた。だけどそれは凄く嘘っぽく感じられた。心から笑ってるようには見えなかった。

 先生が来て俺達がプレハブ小屋でする事の説明を受けた。ウサギの餌やり。それと小屋の掃除。他にもやる事はあるけど、大体はこの2つだった。俺はその内容を聞いた時面倒くさいと感じたが、対象的に久川奈津は楽しそうな様子だった。

 事実、ウサギの世話をしてる時の彼女は楽しそうだった。普段見せている笑顔とは全く違う。無理して笑っている感じがなかった。


『いつもそうやって笑ってればいいのに』


 俺はいつの間にか思った事をそのまま口にしてたらしい。彼女の顔に曇る。それを見て俺はやってしまったと思った。その日はそのまま別れた。俺は家で、彼女――久川奈津の事を考えた。彼女のあの笑った顔をずっと見ていたい。作り笑顔なんかよりずっと可愛かったから。俺はその夜ある決心をする。


『おはよう。なっちゃん』


 朝、俺は教室で久川奈津を見かけると、挨拶をし彼女の事をそう呼んでいた。久川奈津――なっちゃんは目を丸くする。


『なっちゃんって……アタシの事?』


 俺はその問い掛けに吹き出す。


『アタシの事? って。なっちゃん以外にいるわけないだろ』

『そう。でもどうしてアタシに構うの?』


 彼女は辛そうな表情で問い掛ける。


『どうしてって……。クラスも同じでウサギの飼育係も同じなんだから構うのは当然じゃんっ』


 俺は笑って答える。だけどそれとは対象的に、なっちゃんは暗い顔をする。


『アタシは……友達なんていらない』


 そうキッパリ言ってなっちゃんは、本を取り出して読み始めた。これがなっちゃんと出会った頃の話。

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