side晶 お前を地獄に叩き込む
☓☓☓☓☓
「……話?」
俺は白けた気分になる。この期に及んで話す事なんてなにもない。というか、姉さんを死なせる原因を作ったコイツと同じ空気など吸いたくもない。
「そんな事を言うなよ? こっちは分からない事が一杯なんだ。ある程度話してからにしてくれよ」
淡々と蓮本は言う。彼の常に無表情な顔からはなにも読み取れない。ま、少しくらいならいいか。
「分かった。少しだけ付き合ってやる。で、なにが聞きたい?」
俺が問いかけると奴は数秒目を瞑って再び開くと
「まず、強盗の件についてだ」
ああその事か。俺は下らないと思いながら疲れたように笑う。
「強盗の事か。別に何でも良かったんだ。お前が中学の頃と同じように、お前の立場が悪くなるように出来れば良かったんだっ」
そもそもお前が中学の頃のように尖っていれば、強盗なんてしなくて良かった。
「あの6人組は?」
「ああ。あの頭の悪い人間か。簡単だったよ。お前に凄い嫉妬していたみたいだったからな」
人なんて簡単だ。特に嫉妬を抱いてる相手を陥れようとする計画には簡単に乗ってくれる。人は簡単に他人を蹴落とす生き物だからな。
「あの刃物は購入した物で、犯行には一切使ってない。お前の鞄の中に入れるときまで封は開けるなと言っておいた。だから警察に渡っても、指紋なんて出ない。札束はコンビニで得た物だが、それを証明する手段もないし、指紋が一致したところで大した証拠にはならない」
「アイツ等は捨て駒なんだろう」
俺は蓮本の言葉に口元を緩める。ああそうだよ。正直あんな事をしても、コイツは逮捕される事はないだろう。そして開放されればコイツは疑問に思う筈だ。誰が鞄の中に仕込んだのだろう? ってな。
そして、学校に来れば周りから白い目で見られる。ただでさえ最近校内1人気の高い女子と一緒にいる事で嫉妬を受けていたから。効果は俺の予想よりずっと上だった。
「これでお前が完璧、孤立すると思ったんだがな……」
俺は蓮本の近くで自身の身体を抱いて震えている女――久川奈津に目を向ける。正直想定外だったのは良くも悪くもコイツだ。久川のお陰で俺の計画していた蓮本を孤立させること自体は、予想以上に上手く行った。これでコイツに居場所を失くす。そう思っていたのに。
「その女のせいで、お前は孤立しなかった……」
蓮本は震えている久川に目を向け、再び俺に目を向けてくる。
「お前の姉さん。榊原優恵の事を全部話したのか……」
「そうだっ。まぁその女は信じてないみたいだがな」
「えっ? だって俺が近付こうとしたら」
「――それはさっ」
俺はそう言って奴の前まで駆け寄ると鳩尾に拳を叩き込む。
「――ぐふっ」
「蓮本っ」
鳩尾に拳を食らった蓮本はその場に蹲る。俺は迷わずに蓮本の頭を掴んで顔に膝を打ち込む。
「――お前を地獄に叩き込む話を俺がしたからだよっ」
俺はそう言って蓮本を投げ飛ばした。




