side奈津 アタシはそんな自分がキライ
◇◇◇◇◇
ババ抜きで負けちゃった。アタシは握り締めたままのジョーカーを眺める。カードにはニタニタといやらしい笑みを浮かべているピエロがジャグリングをしている様子が描かれている。
ピエロ……。なんかアタシ――久川奈津をそのまま表してるような気がする。この絵に描かれているピエロのように笑って誤魔化したりなんかしてないけど、ある時期を境に他人に対してアタシは一定の距離を保つようにしてきた。そうする事があの子に対しての贖罪なんだと思っている。そう思い込んでいる……。アタシはそんな自分がキライ。
「奈津っ、アンタは誰かと1か月誰かと付き合ってもらうわ〜っ」
アタシがずっとカードを眺めてそんな事を思っていたら香那が大きな声で宣言する。あぁ……そういえばこのババ抜きに負けた人は罰ゲームを受ける事になってたんだっけ? 1か月誰かと付き合う……付き合う。
「……は?」
アタシは間抜けな声を上げる。言ってる意味がよく分からないんだけど。香那はそんなアタシに得意気な顔をしながら
「だから、これから誰かと1か月付き合うのっ」
「……誰が?」
アタシは得意気な顔して同じ事を言う香那に確認を取る。
「なっつんがだよ〜」
その質問には香那ではなく聖羅が答える。それもイジワルな笑みを付きで。でも憎たらしいけど、可愛らしくて憎めない……って普段ならそう思えるんだけど今回ばかりは流せない。
「……誰と付き合うの?」
アタシがそう尋ねると香那と聖羅は2人して黙り込む。まさかそこまで考え回ってなかったの?
「そうね。それは考えてなかった……どうする香那〜?」
「ん~そうだなー」
2人の困ったような声が教室に響く。こんな軽い気持ちでアタシの付き合う人間を決められるなんて……。正直言って嫌だ。アタシは2人のこういうノリは嫌いだ。人を人として見ていないように感じるから。それに罰ゲームの内容からしてアタシが嘘の告白をするって事じゃん。そんなのアタシはしたくないし、されたほうだって……。アタシがそんな事を思いながら教室の出入り口に目を向けたら
「――っ」
そこにいつも気にしている男の子と思われる後ろ姿が視界に入る。あの後ろ姿、学校に来る度に毎日眺めているから見間違いのはずが無い。ふとある事を思い付く。
「――ねぇ」
気付けばアタシは香那と聖羅に思い付いた事を口にしていた――。




