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久川奈津様?

「……アイツ等か」


 俺は自席とは反対側の隅の席辺りで集団を作っている連中に目を向ける。


「えーと……に、し、ろ、うん。丁度6人いるわね」


 俺は1人1人の顔を見た。6人の顔は特に変わった特徴はなく、どこにでもある顔……いわゆるフツメンの部類だ。まぁそれは俺も……いや、俺の場合はブサイクか。


「よし、行こうか」


 俺はそう言って彼等の元へと行く。俺が彼等の元に辿り着くと全員俺に対して訝しむ視線が向けられる。


「お前達なんだろ? 俺の鞄に札束と包丁入れたの?」


 俺は単刀直入に本題をぶつける。変に前置きをすると相手にしてくれない場合もあり得るからだ。


「「「「「――っっっ」」」」」


 それに案の定、1人くらいこの話題をぶつけて顔に出す奴はいるだろうと思ってたが、まさか全員だったとは。


「なぁ、なんでこんな事したんだ?」


 俺がそう問いかけるとこの集団のリーダー格だろうか。背が高いわりにひょろひょろの男が立ち上がる。


「俺達は関係ないっ。ただ言われてやっただけだ……あ」


 あーコイツ馬鹿だ。自分から墓穴掘りやがった。まぁあれか。誰かコイツ等に命令した奴がいるってことか。


「誰から命令されたの?」


 久川さんが淡々とした口調で尋ねる。


「そ、そんなの……教えられない」


 ひょろひょろな男、名前知らないんだよな。ひょろ男で良いか。ひょろ男は目を伏せながら答える。


「利用されてるだけだと思うんだけど、その誰かにまだお前等義理立てするの?」


 俺がそう言うと6人は一斉に目を伏せる。そう、どう考えたってコイツ等は捨て駒だろう。大体少し考えれば分かるだろう。第1目撃者が疑われるって。


「そういえば俺の鞄にはどう入れたんだ?」


 その質問には他の男が答える。ひょろ男とは対象的に太っている男……もう太っているって次元じゃないな。そういえば、ウチのクラスに身体測定であまりの重さに体重計を壊した奴がいるって聞いたな。それで渾名が()()()()()()だとか。幼稚なネーミングセンスだな。


「それはほら、僕等で座席を囲んで、コイツが手袋して入れたんだ」


 そう言ってクラッシャーは右隣にいる、背の低い男を指差す。俺はその方法を聞いて思う。随分アバウトだし普通俺が容疑者として、任意同行をくらう必要なかったんじゃ?


「別に俺達は悪くねぇ」

「あぁそうだっ」


 まだ喋ってない3人のうち2人が必死に責任逃れの言葉を口にする。最後の1人はずっと俺を無言で睨みつけていた。


「なんだよ?」


 俺は我慢出来なくてソイツに尋ねる。ソイツは俺に依然として憎悪の篭もった視線を向けている。俺はソイツに歩み寄る。次の瞬間


「――っ」


 胸ぐらを思いっきり掴んできたかと思ったら押し倒される。思いっきり背中を床に押し付けたせいで痛い。


「お前がっお前が悪いんだっ」


 男はいきなり俺の事を糾弾する。俺が悪い? 見に覚えのない事を言われて俺は戸惑う。


「なんで……なんでなんでなんでなんでなんでっ」


 男は狂ったように言うと拳を宙高く振り上げる。


「――ふっ」


 俺は勢い良く起き上がって頭突きを男にお見舞いする。相手の眉間へとぶつけた瞬間ゴリッという音が響く。だいたい、馬乗りになりきれてないから、拘束されてないのと等しかったから簡単に抜け出せたわ。コイツ……喧嘩のやり方知らないな。


「ぐっ、くそっ」


 男は己の拳を地面に思い切り叩きつける。


「……俺が何かアンタに悪い事したのか?」


 俺は男に尋ねる。どうせしょうもない理由なんだろうけどな。


「お前は……クールな()()()()()を変えたっ。俺はそれが許せねえ」


 ……はい? 久川奈津様?


 瞬間、他の5人が一斉に立ち上がる。


「よくぞ言ったっ」

「我もそれが気に食わんっ」

「独り占めしてんなっ」

「俺達の久川奈津様を返せっ」


 えーとこれってつまりあれか? コイツ等は久川さんの熱烈なファンで最近クールだった彼女が俺のせいで変わった上にいつもベタベタしてるから。それで許せなくて俺に濡れ衣を着せたっていう。なんていうか……。


「くだらないわね」


 久川さんが1言そう呟く。今までにない冷たさをその声に孕ませて。彼女が1言呟いただけなのに部屋の中が、急激に冷えたような感覚がした。


「「「「「「おおぉっっっ」」」」」」


 あれ、なんかコイツ等逆に喜んでるんですけど? なんなんだ。そういう性癖の持ち主なの?


「そうですよっ。その冷たさですっ。俺達が求めていたのはっ」


 俺を押し倒した男が歓喜の声を上げる。そして俺を指差す。


「なのに、貴方はコイツといる時だけいつもの貴方じゃなくなるっ。何故ですかっ。好きな男だとでも言うのですかっ!?」

「言いたい事はそれだけ」


 久川さんが男に対して冷めきった目を向ける。男はその目を見て喜ぶ。後ろにいる5人も喜んでいる。


「まずアタシが誰と関わろうと性格変えようと、アンタ達には関係ない」


 久川さんが男達を見回しながらキッパリ言う。


「こんな下らない事でアタシの()()()()()()()を巻き込むな。そして全員蓮本に謝れ」


 この後久川さんのファンである6人の男共に謝り、その日の調査はそこで終わりとなった。

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