何があったんだ?
昼休みになって俺達はまず職員室に向かった。担任である金田に聞けば第1目撃者が分かるだろうと思っての事だ。だけど……
「流石に俺が聞く訳にはいかないよな……」
容疑者である俺が聞きに行ったら警戒される事だろう。だからここは
「アタシに任せてっ」
と胸の辺りをポンッと叩く久川さん。俺はそんな彼女を見て、暖かい気持ちになる。
「うん、お願い久川さん」
「――う、うんっ」
俺がお願いをするととびっきりの笑顔を向けながら返事をする久川さん。
「じゃあ行ってくるね」
そう言って彼女は職員室に入っていく。その後ろ姿を俺は見えなくなるまで見つめる。そして考える。彼女――久川奈津の事を。
昨日、友達になった訳だけど……友達って何すればいいのっ。いや、小学生の時は一緒に遊ぼうって言ったら公園でサッカーとか野球をしてたけどさ。俺今高校生じゃん。しかも相手は女子だよ。どうすればいいか全く分かんねぇよ。よく考えれば俺、女子の友達いるにはいたけど男子ばっかと遊んでたわ。尚更分かる訳ねえわ。
そんな事を考えて10分経った頃久川さんが職員室から出てくる。思ったより長かったな。
「おかえり。どうだった?」
俺はそう問いかけるけど彼女は顔を俯かせている。
「……ん。久川さん?」
俺はそう問いかけながら俯いている彼女の顔を覗き込む。すると
「――キャッ」
「――うおっ」
覗き込んだ俺に驚いた久川さんが俺を突き飛ばす。俺は身体を少しよろめかせながらも、なんとか耐える。
「と、突然何すんのよっ」
久川さんが顔を赤くしながら言う。言い方に棘があるように聞こえるけど、俺何か悪い事したっけ?
「いやその……情報は聞けた?」
「え、あぁその事……。ええ聞けたわよ」
問いかけるに落ち着きを取り戻す久川さん。いったい職員室で何があったんだ?
「誰だったの?」
職員室で何があったか気になる気持ちを抑えて、第1目撃者が誰だったのかを聞く。
「それがね……。1度に複数の人間が発見したそうよ」
「え。どういうこと?」
俺は久川さんから事情を聞く。どうやら、金田の言う話だと6人の生徒が押し掛けてきたという話だ。それも同じタイミングで。あの時、俺の机の周りにいた生徒だろうか?
「どう考えてもソイツ等が怪しいな」
「そうね」
因みに俺の鞄の中に入っていた包丁と札束だが、包丁の方は指紋が一切検出されなかったらしい。だからこそ俺がまだ逮捕されないで済んでいる。ただ、強盗の時に使われたと思われる包丁と札束が見つかった事からして、警察側は犯人は俺ということで概ね決まっているらしい。冗談じゃない。無実の罪で逮捕なんてされてたまるかっ。
おまけに嫌な所は実行犯の姿がコンビニ店員の目撃証言しか無い事。俺の通う鷹明高校は山に囲まれたド田舎で監視カメラなどという設備は整っていなかったりする。コンビニもコンビニで、個人でやっている所ばかりで監視カメラは配備されていない所がほとんどだ。
時計を見る。時刻は1時35分。昼休みが終わるまで後5分。
「……取り敢えず教室に戻ろう」
俺は久川さんにそう言うと、2人で教室に向かって歩き出す。




