side奈津 反則だよ〜っ
◇◇◇◇◇
朝、アタシはいつもと変わらずに学校に登校する。けど今日のアタシはウキウキしていた。ウキウキはここ最近してたけど、今日のウキウキは今までとは段違い……だって
『ああ。久川さん、これから宜しくっ』
だって……。今日からアタシとゴンは友達なんだから。キャ~〜ッッ!! なんか凄い嬉しいんだけどっ。ここまで1週間なんか長かったような気がする。でも達成感っていうのかな。ようやく、アタシの声がゴンに届いた。そう考えると嬉しくてたまらない。
そんな事を思っていると、アタシの前方にいつも見ているゴンの後ろ姿が見えた。なんか昨日後ろから抱きついて、背中思ってたより大きいなあとか変な事考えちゃったから、ちょっと恥ずかしい気持ちになる。
声掛けて良いよね? だってもう友達なんだから。出来れば昔の頃みたいに、笑ってくれたら嬉しいんだけど。
「……?」
そこである違和感に気付く。なんかゴンが通る道中にいる生徒が、皆彼を顔見している。男子はなんか驚愕の表情を浮かべてて、女子はウットリとした顔をしてる。まるでアイドルを眺めるファンみたいな。
「おはよう蓮本っ」
アタシは周りの生徒を疑問に思いながらも、ごんに挨拶の言葉を掛ける。いつもだったら、ここで無視されて終わってたけど今日からは違う。その証拠にアタシの声に反応してゴンは足を止めた。そうだって今日からは……。
「――えっ?」
後ろを振り向いたゴンを見て、アタシは息をするのも忘れ鼓動がドクンドクンドクンと早く脈打つ。
「おはよう」
目の前にはゴンがいる。うん、これはいつも通り。ただ違うのは、髪型だ。昨日まで目が隠れるほど伸びていた髪。だけど今日はその内の右側だけが眉毛の辺りで切り揃えられている。その髪型はハッキリ言ってヤバいっ。
昨日ゴンの髪を掻き上げて見た両目は、切れ長の睫毛に一重まぶたの人間によくある特徴の細目。そしてその細目に収められている翡翠色の瞳。昨日見た感想は中性的な面立ちにこの目は反則だよ〜。と、思った。まさか昨日の今日で髪を切ってくるとは。というか、なんで右側だけなのよ……。
「……? どうかしたの久川さん?」
不思議そうな顔でゴンがアタシを見つめる。アタシはゴンの翡翠色の瞳に吸い込まれるように……まるでそうするのが自然のように見つめる。こうして見るとゴンはクールな印象の男の子に見える。誰も寄せ付けようとしない冷たい人って印象。
「あの、そんなに見つめられたら……困るんだけど」
「――っ」
ずっと見つめているアタシにゴンが困ったように言う。翡翠色の目が伏せられる。そして頬に人差し指を這わせポリポリと掻く。アタシはその姿を見て不覚にもドキッとしてしまう。
「本当、反則だよ……」
アタシはそう言いながらゴンの横を追い越す。
「あっ待ってよ、久川さんっ」
そう声を上げながらゴンがアタシの後を追ってくる。後ろからコツコツと、アタシのスピードに合わせて靴音が鳴り響く。アタシは、その音を聞いて自然と笑顔になる。昨日まではアタシが追っかけてたんだよなあ。それが今ではアタシが追われる側なんだ。笑わずにはいられない。そんな事を思いながらアタシとゴンは、教室へと向かった。




