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ホンモノが欲しかったんだ

「――すいませんっ、すいませんっ、すいませんっ、すいませんっ」


 もう何回謝っただろう。何回頭を地面に叩きつけただろう。結局俺はあの頃からなにも変わってない。孤独を選んだのは誰も俺の事を理解してくれないからだ。本当の事を言っても、誰も見向きもしてくれない。向けられるとしたら白い目だけ。

 だから小学校はもうなにも否定すること自体をやめて受け入れる事にした。事実ではない事を。そうやって、小学校はやり過ごしてきた。中学校は小学校に引き続き、俺の噂はあっという間に広まった。俺はそれでもう友達を作る事を諦めた。どうせ、信用出来る人間なんて……誰1人としていないのだから。

 小学生時代は言葉でのイジメだけに終わっていた。だから俺もそれ以上なにもされなかったから、耐えられた。だけど中学はそれだけには終わらなかった。毎日のように殴られ、服もビリビリと何度も破かれた。その度に家に帰れば両親が冷めた目で俺を見ていたのを俺は今でも覚えてる。

 暴力というけど、1対1で殴られるならまだいい。1対大勢……。俗にいうリンチ状態の場合は最悪だった。どこにも逃げ道が無くて俺が気を失うまで延々に殴られたものだ。で気付いたら、衣類全てを取り除かれ素っ裸の状態だった。家に着いたら、顔がタコみたいに腫れ上がっていた。そんな自分を見て何度泣いたことだろう。

 1回、教師に相談をした事がある。だけど教師から貰った言葉は……。


『蓮本……。お前の悪い噂は色々と耳に入っている。だからお前がやられるのは仕方の無い事だと俺は思うけどなぁ』


 という言葉だった。俺はその言葉を聞いて絶望した。教師ですら俺の事を見てくれないのか。俺にとって身近の大人という存在は親や教師だった。だから今でもそうだけど俺は大人という存在が嫌いだ。大人は子供の延長線でただ年を取っただけで威張ってるだけの無能だと、俺は思ってる。

 だから俺は、両親は元より大人という存在を信じない。大人も俺達子供となに1つ変わらない。噂だけで人を判断する。それが悪い噂ならさらに誇張して広める。だから俺は人に自分からは歩み寄らない。必要最低限関わるだけでいい。

 そう心に決めてからは全てが楽だった。どんな罵詈雑言が来ようと俺は受け流せるようになってた。暴力なんか、受けている内に痛みを我慢すればそれで終わる。傷なんて時が経てば癒えてなくなる。多少痣になる事もあるだろうけど、目立つことはないだろう。ならいいじゃないか……と考えるようになった。

 でも、進路の時に思ったんだ。地元じゃやっていけないなって。また有りもしない悪い噂を広められて、学校に居辛い環境にされたら困る。だから僕は地元を離れて、態々県外の高校を受けて引っ越してきたのに。

 俺がいったい何をしたってんだよ。俺はただ普通に生活してるだけだ。なにも悪い事なんかしてないっ。なのにどうしてっ。


『――約束っ。どんな事があってもわたし達は友達っ』


 瞬間、6年前の記憶が蘇る。懐かしいあの記憶。転校してきた女の子が、『転校続きで、わたし本当の友達がいないの』って寂しそうな顔で言うから俺は小指を女の子の小指に絡ませて約束したんだ。


『――ずっと友達だよっ』って。


 その約束はもう果たされない物となってしまった。いやその約束をした相手でさえ、()()()()()()。俺は……、俺は……ただっ!!


「――っ」


 突然背中に柔らかな感触が訪れて動きを止める。だけど最初警戒したが、その感触が俺に敵意は無いと伝えてくる。首にも柔らかな感触……、ここ最近俺に絡ませてくるある1人の女の子の細腕が回される。


「――もう大丈夫よ」


 彼女の柔らかな声音が俺の固くなった心を優しく溶かす。


「……う、うぅ。うわあああァァァッッッ」


 俺は気付けば大声を上げて泣いていた。おかしいな? いつもなら、こうやって人前で泣く事なんかないのに。でも多分、彼女――久川奈津が俺がずっと心の底で欲しいと願ってた物なんだ。


――俺は友達(ホンモノ)が欲しかったんだ。

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