俺はどうしちまったんだ
久川さんを糾弾したその日気付けば放課後を迎えていた。いつもより、時間の流れが早く感じた。理由はなんとなく分かる。俺が久川さんを泣かせた事が原因だろう。
彼女の泣き顔を見た時、俺の胸がズキリッと鋭利な刃物で引き裂かれたみたいな感触が訪れた。それから今日1日彼女の事ばかり考えていた。
なんでだ? 彼女――久川奈津は校内1人気の女子だ。容姿端麗で誰に対しても冷たい印象。逆にそれがクールでカッコいいと逆に人気に拍車がかかった。俺も男だから気にならないと言ったら嘘になる。
だがそれは鑑賞対象としてだ。可愛い女の子がいれば誰だって目が行く。でもあの時に来た胸の痛みは鑑賞対象に抱く物とは思えない。俺からしてみれば、雲の上のような存在だ。俺が好きに出来るような存在じゃない。アイドルのような存在。
だけどここ最近、色々と変わりすぎている。スクールカースト最下位の俺にスクールカーストの頂点に君臨していると言って良いであろう久川奈津が俺に関わるようになってきた。それまでずっと人と必要最低限関わらないようにしてきた俺としては困る。そのはずなのに。
『ごめん……ごめんねっ』
俺はどうしちまったんだ? 久川奈津の泣き顔を見てズキリッと胸が痛んで、そこから彼女の事ばかり考えてる。俺は後悔してるってのか、彼女を糾弾した事を。でも多分そうなんだろう。現に俺はあの泣き顔を見てこう思ったんだ。
――こんな泣き顔見たくない……って。
なんでそう思ったのかは分からない。だけど確かに俺はそう思ったんだ。泣き顔じゃなく笑顔を見せてほしいって。こんな思いを抱いたのはこれで2度目だ。1度目は6年前、俺の通っていた小学校に1人の女の子が転校してきた。もうその子の名前や顔は覚えてないけど、俺はその子に多分……恋をしてた。
だからよく昼休みは一緒に行動してたし、彼女が困っている時力になろうとした。だからかな。俺は久川奈津に対してどこか懐かしさを感じている。その正体は、その女の子と久川奈津を何故か重ねてみているのかもしれない。最低だ。何を根拠にそう思っているんだよ。
俺は、自席から立ち上がる。視線を今空席になっている久川さんの席へと向ける。あの後戻ってきた久川さんは俺を見るなり、すぐさま視線を逸らしていた。何故かその時、彼女のオレンジ色の髪の間から見える耳がリンゴみたいに真っ赤に染まっていた。それから、放課後までずっとそんな感じだった。そういえば、久川さんが俺にほぼほぼ関わらない日なんて初めてなんじゃないか?
「今日は帰るか……」
俺は自分にそう言い聞かせる。まだ時間には余裕がある。聞き込みは明日からでも別に問題はないだろう。そう思って扉に向かおうとした瞬間
「……待ちなさい」
と声を掛けられる。俺は声のした方へ目を向けるとそこには不機嫌な顔で腕を胸の前で組む井上香那と不敵な笑みを浮かべながら片方の頬に手を当てている木下聖羅が立っていた。




