side奈津 恥ずかしい所見られちゃったな
◇◇◇◇◇
「……うぅ」
アタシは今自分のクラスの教室の近くにある女子トイレで、声を押し殺しながら泣いていた。理由は蓮本の叫んだ1言が原因だ。
『俺は人と関わるのが嫌なんだよっ。はっきり言ってアンタのやってる事は俺にとって大迷惑でしかないんだよっ』
その前にアタシがベタベタ付き纏ってる事について糾弾したけど、そんなのは別に耐えられた。寧ろ言われて当然だって思ったから。
だけどその次に言われた事には心にグサッと来た。あんな事を言わせるほどまでに、6年前の出来事が彼をあそこまで、歪ませてしまったんだ。そう思ったら涙が溢れた。心の中で何度も何度もごめんと言っていた。
「……グスッ」
アタシは頬を伝う涙、そして目に溜まっている雫を拭う。ダメダメッ、こんな暗い気持ちじゃ蓮本を元の優しかったあの時のゴンに戻す事なんか出来ない。
「でもいったいどうすれば……」
まず第1目撃者を当たるべきよね。誰に聞けば良いのかな? というか、今まで人と極力関わらないようにしてたから聞き方が全く分からないんだけどっ。
そうよね。蓮本に対しても涙流しながら『ごめん……ごめんねっ』ってなによ。もっと他にいい言い回しとかあったんじゃないのっ。いやそれ以前に
「――恥ずかしい所見られちゃったな」
私は両手を両頬に押し当て顔を俯かせながら蚊が鳴いたかのようなか細い声を上げる。人前で泣くとか久しく無かったな。最後に泣いたのなんていつだったっけ? 6年前、ゴンの前では笑う事の方が多かったけど、泣く事も少なくなかったような気がする。
その度にゴンがアタシの事を笑わせてくれた。泣き止むまでそばに居てくれた。だから今度はアタシがゴンのそばに居てあげなくちゃ。でも……。
6年も経ってまだゴンの前で泣いてるとか、進歩ないな。
「泣き顔、ゴンの目にブサイクに映ってなかったかな」
ふとそんな事が気になる。小学校の頃はそんなどうでもいい事を気にはしなかったけど。アタシも女の子だ。好きな男の子には可愛く見られたいって思う――って。
「は?」
今何を思った? 好きな男の子? それって誰、いやここまで考えていたのはゴンしか居ないんだけどっ。えっ。つまりアタシは――。
「――ゴンに恋をしてる、の?」
そう言葉にして顔が熱くなるのを感じる。ええぇぇっ!? いったいいつからっ。まさか罰ゲームの相手に選んだ時からかしら? あの時は贖罪の意味で彼に関わろうとしていたけど……気付いてなかったってだけでもう好きだったんじゃ。
でもそこまで考えてアタシは固まる。そうじゃないでしょ奈津っ。仮にアタシがゴンに恋をしてるとして、今のゴンに告白したところで、受け入れてくれるとは思えない。それに人と関わるのは嫌いだって言ってたじゃない。それなのに、アタシの気持ちを押し付けちゃだめよ。
そこで、朝の始業を告げるチャイムが鳴り響く。
「……よしっ」
アタシは両頬をパンパンッと叩くとトイレから飛び出す。今はゴンに対する恋心は置いといてやる事がある。それが全て終わってから、また改めて考えればいい。そう心の中で考えを纏めながら廊下の中を歩いた。




