プロローグ
「アタシ……アンタのことが好き」
夕暮れ時……。図書室で彼女――久川奈津は俺にそう告げる。俺は彼女の顔をまじまじと見つめた。久川奈津の吊り目がちな瞳が微かに潤み、頬はほんのりと赤く上気していた。図書室の窓から差し込む夕日が、久川奈津のオレンジ色の髪を優しく照らす。
「な、なんで……俺……なの?」
俺は彼女の告白に内心冷めていたが、それを悟られないよう戸惑っているように取り繕いながら質問する。すると久川奈津は顔を俯かせる。そして暫くそのままお互い無言の状態が続いた。
ヤバい……分かっていてもこういう時どういう反応をしたらいいのか分からなくて焦る。向こうも向こうでそんな事聞かれても困るだろうしな。居たたまれなくなり、視線を彼女から外そうとしたら……
「そ、それはっ!!」
と久川奈津は突然しんと静まり返った図書室で大きな声を立てた。
彼女の顔を見るとギュッと強く目が閉じられていた。
「アンタは……誰にでも優しいから」
俺はその言葉を受けて思う。久川奈津は俺の何を見てきたのだろうか……。俺はそう思うと同時に今日1日の事を思い返す。だがその前に1言だけ言わせて欲しい。
――この告白は嘘だって俺は知っている。




