金玉で世界が滅びた話
万古。
ある所に、善良なおじいさんと、欲深~いおばあさんが住んでいました。
ある時、おじいさんはおばあさんにシバかれ、何時ものように川に洗濯に行っておりました。
おじいさんが洗濯を終えて家に帰る途中、シクシクと女の泣く声が聞こえたので、そちらを見てみると其処には、イノシシをとる罠にかかった女がおりました。
「可哀そうにのう……、スグにはずしてやるからな」
、人の良いおじいさんは、かわいそうにおもって、スグにわなをはずしてあげました。
「私は金の女神。あなたのおかげで助かりました。
なにかお礼……」
「じゃあ、金をよこせ」
頭を下げ、お礼を言おうとした女神の声を遮ったのは、おじいさんがサボらないかあとをつけていた おばあさんでした。
強欲な表情を浮かべた彼女は、さらに続けました。
「金の女神なら金をだせるだろう?
――お礼として、この地上にある全部の金をよこしな」
「判りました」
よくばり婆さんのとんでもない要求にも、女神は素直にうなずくと、目の前に背丈ほどの金の山をだしました。
「これでどうでしょう?」
「ほお……」
おばあさんの表情が邪悪に歪み、さらに言葉を続けました。
「こんどは太陽系にある金を全てよこせ」
「判りました」
またも女神はうなずくと、今度は少し離れた場所に、富士山ほどの金の山をだしました。
「これで大金もちじゃ~」
おおはしゃぎするおばあさん。
欲にめがくらんだ彼女は、こんどはもっと凄まじい事をいいだしました。
「今度はこの宇宙にある全ての金をよこしな」
「そ、それはちょっと……」
さすがの女神も今度は顔を曇らせました。
「おばさん、やっぱり止めておいたほうが……」
おじいさんも流石に止めに入りますが、おばあさんは聞く耳を持ちません。
「風俗に売られたくなかったら、つべこべ言わずに出すものを出せばよいんだよ」
「出すには出しますが、……どうなっても知りませんよ」
女神はそう言うと、フッと姿を消しました。
次の瞬間、おばあさんの頭上には、天空をおおいつくさんばかりの輝く黄金の玉。
「金じゃ、金じゃ、 これは私の金じゃ~。
グヘヘヘッ、誰にも渡さんぞ」
大金を入れ手にいれ、下品な笑い声をあげ、おおはしゃぎするおばあさんを尻目に、地球より大きな黄金は轟音をあげ、アルマゲドンのように地上へ迫ってきます。
ぷちっ……。
次の瞬間、巨大な金塊にぶつかり、崩壊する地球。
そして、金玉で世界が終わりを迎えた。
何事も、程々が一番なようで。