48.問診票な妹だけど、どうしよう……
「誠一さん、こんばんわ」
私は二条駅で彼を見つけると嬉しくなり、手を振りながらパタパタと近づいていく。
姉ぇの姿が見えない。
「あれ、もしや喧嘩ですか?」
大抵はここまでは姉ぇと一緒なのに珍しい。
「違う違う、唐突にゴゴイチ食べたいとかで京都駅で買ってくる。
他にも買い物だ」
なお、京都駅には二ヶ所ゴゴイチがあって、伊勢丹側にはイートインもある。
名物は豚まんだ。
「……喧嘩だったら、私がつけ入る隙かと」
「冗談と判らなきゃ、帰るとこだぞ?
僕は初音にゾッコンだ」
「あああ、すみません」
誠一さんは本当に姉ぇのことが大好きだ。
羨ましい限りであり嫉妬はするが、憎しみなどは湧かなくなった。
最近は三人で居られればと安定している。
私は姉ぇも好きなのだ。姉妹としてだが。
「喧嘩とかしないんですか?」
「……喧嘩自体はしなくもないが、言いたいこと言い合って、出なくなったら妥協点を探りあう感じだな。
姉妹喧嘩だとどうなんだ?」
「私が丸め込まれます」
悲しいが現実である。
「初音、口回るからなぁ。
頭の回転も早いし、経験からか視野も広い。
僕も燦もマジメよりだから、そこで負けてるんだろうな……」
「そうでしょうね……」
常識に捕らわれすぎている気がすると二人で悩む。
「さてさて、今日は何処で勉強デートします?」
「今日、勉強をする気はない」
「へ?」
私は眼を丸くしてしまう。
「カウンセリングをしようかと思ってな?」
「はあ……」
理解できずに生返事で返してしまう。
とはいえ、言われるがままに誠一さんの家だ。
出してくれたお茶に口をつけて、対面する。
心を落ち着かせるハーブティーの香りが拡がる。
姉ぇ程ではないが、誠一さんも手際がよい。
「燦、僕以外の男子に恐怖心を抱いていないか?」
一杯飲み終わった所に、そう問われた。
「えっと……」
「正直に答えてくれ」
真摯な目で射ぬかれたら従うしかないのだ。
「はい。
痴漢にあってから、怖く感じます」
「成る程」
誠一さんは納得するように何かが書かれた紙に、メモをしていく。
「同学年の男子生徒を見下したりは?」
「……」
ある、が言いづらい。
人を見下すことは、良くない行為だと良識が働いており、言葉にだしづらいのだ。
「燦、僕はそんなことで嫌いになったりしないから素直に」
そう笑顔を向けてくれながら、落ち着けるような口調で言ってくれる。
「……はい、誠一さんに比べて子供ぽいと考えたことがあります」
「成る程」
また、何かを書き加えていく誠一さん。
いつもの様にマジメだが、真剣さが私に伝わってくる。
「もう一つだけ聞きたい」
誠一さんが言葉を貯める。
「自分が異常だという認識はあるか?」
「……はい。
恥ずかしい限りですが、この前みたいに抑えきれなくなったのは二回目です」
「燦、恥ずかしがらなくていい」
「へ?」
「これは憶測だが、僕に性行為を求めるのは安心感を求めてないか?」
「……彼女になりたい、その為の手段としてが第一ですが、有ります。
姉ぇにも釘を刺されましたから、そこは始まりにしか過ぎないとは思いますが」
「成る程。
ちなみに僕にもし、もしもだ、振られたらどうする?」
「……たぶんですけど、やはり私に価値なんかないと、自分を汚すかもしれません」
誠一さんが二冊のノートを机に放る。一冊は汚い文字で考察と書かれており、姉ぇの文字でも、誠一さんの文字でもない。
ただ、もう一冊の表紙には問診票とも書かれており、名前は私だ。
「燦、君は本来、精神科やカウンセラー行きだ」
「へ?!」
いきなりの言葉に変な音を溢してしまい、
「落ち着いて聞いてくれ、燦。
君は性依存症に成りかけてる。
父さんがいる病院で話を聞いた精神科でも、このノートを作った人物も同じ見解だ」
次の言葉に思考を止められた。





