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41.金髪お嬢との会話前編ですが、なにか?

クラスにはカップルが数組有る。

 先ずは今、窓から外へと殴り飛ばされた野球部と殴り飛ばした暴力女の一組。

 いつもの光景だが、よくもあそこまで漫画か何かのように人が飛ぶモノである。

 もう一組は影が薄く、割愛する。あえて言うなら、存在が薄い。

 逆に残った最後の一組は濃すぎる。

 委員長兄、お嬢、委員長妹の一組だ。三人だがとりあえず、一組で良い。

 大抵三人でお昼を食べている。


「「えっと」」


 廊下に出ようとしたら、クラスの出口でお嬢と鉢合わせた。

 どちらが先に行くまでもなく、譲り合ってお見合いしてしまう。

 カースト自体は私の方が上だが、私自身が引け目を感じているのも理由にあり、先に譲ろうとしてしまう。

 あっちとしてはカーストとか気にすることが無くなったわけで、純粋に譲ろうとしているのだろうと思うが。


「鳳凰寺さんも食堂?」


 風紀委員ならびに委員長達は昼食時に会議があると出かけて行った。


「はい、二人とも居りませんし、流石にあの暴力漫才に混ざる気もありませんので」

「ははは……お昼一緒する?」


 誘うと、お嬢は悩む素振りもなく、


「いいですね。

 行きましょうか」


 っと乗ってくれる。

 そして、二人で並んで歩いていく。

 普段、私も視線を集める方だが、やはりお嬢は目立つのかいつも以上に視線が来る。

 金髪褐色というギャル要素が満点なお嬢は目立つ。

 なお、その要素が天然モノなので中身は完璧にお嬢様だ。

 中間学年三位の文部両道、そして名家の長女で動きも洗練されて奇麗だ。

 胸は小盛りだが、逆にモデルのようなスラリとした長身スタイルと言える。


「初音さんが居ると、視線が集まりますわね?

 いつも以上ですから」


 私だって当然、負けていない訳でしてね?

 スタイル抜群の巨乳よ。

 天然茶髪だし。

 手入れも抜かりはない。

 学業成績さえ除けば負けはしない。

 運動だって、元陸上部だ。


「鳳凰寺さん程では無いですがね?」


 世辞を世辞で返す。

 とはいえ、狐の化かしあいに近い感じを覚えるのは考えすぎな気がする。

 そもそも相手は私を敵と見ていない筈だ。

 理由が無いのだ。

 私はそれを確信に変えようと深呼吸し、敵は自身だと言い聞かせ、踏み込む決意を固める。

 いつまでもわだかまりを覚えているのは性に合わないのだ。


「鳳凰寺さん」

「はい?」


 意思を籠めて言葉を掛けようとするが、お嬢が道を間違えるのを観て、居合を外されてしまう。


「……そっち職員用」

「ありがとうございます。

 つい昔使っていた癖で」

「……そっち入っても何も言われてなかった訳ね」


 そんなお嬢様ぶりを発揮してくれるのをフォローしつつ、いつも私としどー君が使う定位置へ。

 私も彼女もサラダうどんだ。


「……鳳凰寺さんはクラスでの立ち位置、気にしなくなったけど、どうしてなの?」


 半分ほど食べたところで、そう先ほど言いそびれた質問を投げかける。


「本当に欲しかった居場所を貰えたので。

 クラス内でしか居場所を求めるしか出来なかった世界を解き放って頂けたんです」

「委員長に?」


 コクリとハニカミながら笑うと美人が眩しい。

 頬を赤らめ、本当に嬉しそうだ。


「委員長が、鳳凰寺さんを私を含めたクラスメイト全員で無視するように誘導したのを知った上で?」


 事実である疑問点に突っ込む。


「もちろん。

 それを解消してくれたのが彼で、マッチポンプだったことは存じ上げておりますわ。

 その上で、私から彼のことをお慕いしているんです」


 うっとりと話す表情から恋する乙女という文字がハッキリと理解出来た。

 私だってしどー君の事を思うと同じような表情をしてるだろう。


「色々と、本当に色々と頂けたので私は彼の為なら何だってする所存です。

 身体だって、財産だって、魂だって、欲せられれば渡します。

 本人、そんなものは要らないって断言するかと存じますが」


 強い意志を感じる。

 成程、確かにこれは恋だ。

 私だってしどー君に求められたらきっと何だってしてしまう。


「それなら肩の荷がおりたかな……」


 緊張で乾いた口をお茶で湿らせながら続ける。

 

「御免なさい、鳳凰寺さん。

 ケジメとして謝らせて」

「?」


 相手としては当然に意図しない謝罪だったのだろう、クエッションマークを浮かべて頭を下げた私を観てくる。


「妹委員長を虐めるのを嫌だと思っていた。

 そこに虐めの指示を皆で聞かなければイイと提案されて、結局それ自体が鳳凰寺さんを虐めるトリガーで……委員長にしてやられたとはいえ、すんごく後悔してたのよ。

 あんたを引きずり落としてカーストを上げたかった自分の欲を上手く使われたのも否定できないし」

「集団無視の件は、私が他人を使って貶めようとした因果応報。

 いい勉強になりましたわ。

 それにそれがきっかけで私が本当に欲しかったモノも判りましたし。

 塞翁が馬、お礼を申し上げるべきですわね」


 笑顔で返してくれるので気が楽になる。


「ただ、それを重荷に思われるようでしたら、一つお願い事を聞いていただけますか?」


 ニコリとした笑みに重圧が加わる。


「……お金はないわよ?」

「それに関しては困ったことありませんので」


 場を和ませようとする冗談にマジレスされて所得格差を思い知らされる。

 ぐぬぬ、どうせウチは貧乏である。

 最近はしどー君マニーで安定しているが。


「お互いに彼氏持ちですから、情報交換をお願いしたいんです」

「あー、なるほど」


 私としても叶ったり、願ったりだ。

 委員長をグヌヌさせる手立てにもなる。


「それはこちらとしても願ったり、叶ったりだわ。

 よろしく、鳳凰寺さん」


 手を差し出す。


「はい、よろしくお願いいたします」


 と、柔らかく握り返される。


「でわ、さっそくお聞きしたいんですが」

「はいほい?」

「相手をその気にさせる方法を知りたいのですが」

「……あー。

 鳳凰寺さんなら普通にアピールすれば、欲情させれるとおもうけど……」


 委員長を浮かべる。

 あれは突拍子もない行動をしているが、計算づくのタイプだ。女がにじり寄っても、自分を律することが出来る。


「例えば、好意を露わにしてそっと近寄るとか。

 手を握ってあげたり、そっと胸元に頭を寄せてみたり、五感を刺激してみるのが良手よ……男ってモノは少なかれ、性欲をもってるものでしてね?

 それとなく女の子が良いよってアピールすれば喰いつくわよ?

 ウチのマジメガネがそうだし」


 しどー君にすると、非常に嬉しがってくれる。


「なるほど。

 直接的過ぎてるんですかね、私……。

 投げてますし」

「投げ……?」


 謎な単語が出てきたので反芻してしまう。

 DVか何かだろうか。


「嬉しすぎると投げたりしません?

 押し倒したり」

「投げはしないけど……発情して襲い掛かりそうになるわ……」


 同じような事だろう。

 最近、危なかった。

 私も妹のことが言えないのだなと、物凄く反省した。


「うーん。

 うちのしどー君もそうだけど、常識とか、なにかでラインを引いている場合、それを超させたり、回避させる必要があるのよね」


 キスは学内ではしない。

 風紀委員ということもあって人前でやろうとすると拒まれる。

 だからどうしても抑えられない場合は、校舎裏に行って人が居ない状況を作って、ちゃんとしたキスをしてもらう。


「校舎裏でキスのことですか?

 昨日の放課後とかも」

「何で知ってんの……?」

「内緒です」


 怖い。

 人が居ないことを確認してやってるのに。

 まぁ、私は人前でも一向にかまわない訳だが。


「いいですよね、情熱的にやられていて」

「委員長とはやらないの?」

「求めればしてくれるんですけど……はしたなく思えてしまいましてね?

 彼からは求められること少ないですし」

「攻めなきゃダメよ。

 結局、人間なんか、行動で伝えなきゃ伝わんないんだから。

 私も毎日、愛を囁いてるからこそだし」


 おはようからおやすみ迄である。

 寝ない時もあるけど、うぇへへへ。


「そういえば、委員長とどこまで進んでるの?」

「……」


 私の言葉にお嬢様がお茶をせき込んだ。

 もしやと思い、お嬢の歩き方や腰つきを思い返し、


「まさかまだ処女?」

「……はい」


 頬を赤らめて俯きながらの想定外が飛んできた。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 初音はいつか彼氏をクラスで普通にキスするように調教すると信じます
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