40.家族依存症な委員長に質問ですが、なにか?
私、初音は基本的にどんな相手だろうと苦手になることは少ない。
とはいえ、今のクラスになって苦手な人物は増えた。
先ずは、
「付きまとわれた時のしどー君よね……」
後で聞いた話だが、土曜日は探偵に監視させていたガチストーカーだが、今の私はそれを嬉しく思うぐらいには入れ込んでいる。
それだけしてくれたと思えば今では滾る。そうして貰えなければ、私はしどー君と歩めなかったしね?
さておき、まだ苦手な人物がクラスに二人いる。
「次にお嬢」
ハーフの金髪褐色肌で、ヤの文字が付く稼業の長女。
スラリとしたモデル体型の美女だが、胸はうっすらだ。
結論から言えば私はそんな彼女をクラスのカーストから引きずり落としたことがある。
……引きずり落とすように、とある人物に無意識的に誘導されたというのが正解で、私達クラス女子全員(委員長(妹)と暴力女を除く)で無視を行った訳なのだが、言い訳しない。間違いなく、欲目をコントロールされた。
だから、お嬢には引け目から苦手意識を持っていた。
とはいえ、あっちから見れば全然それを意識すらしていないようで、普通に会話出来て以来、解消されつつある。
また、お嬢がカーストにも興味が無くなり、もっぱら委員長とイチャイチャしているのも大きい。
「最期に委員長……」
未だに苦手意識が根強い。
もう一人はお嬢無視事件でクラス全員を誘導した人物こと、委員長(兄)である。
委員長(妹)……妹ちゃんは先日、お弁当を食べに来た可憐なアルビノ少女だが、こちらもアルビノだ。
日本人離れした白い髪、人を殺したことのある様な鋭い目つきが特徴だ。
私は上手い事使われた事実から苦手意識を持っており、敵対したくない相手とも位置付け居ている。
というか、クラスの中で、こいつに苦手意識を持っていない奴はいないと思う。
まあ、面倒見が良く、博識なため、相談事はクラス内外問わず笑顔で受けているとのことでそのクラス評判も和らいでいる訳だが。
さておき、
「いいんちょー」
今日はそんな委員長に相談事があり、妹ちゃんとお嬢が二人で席をはずしたタイミングを狙って話しかける決意をしていた。
運が良いことに、野球部も暴力女も居ない。
私が培った勘で言えば、彼は敵対しなければ無害だ。
結局、クラス全員を誘導してお嬢を制裁した理由は、お嬢が委員長(妹)を虐めるように女子を仕向けたのが強かった。
その実行犯である染谷ちゃんも許されているし、何故だか知らないがお嬢と委員長(兄)は許嫁となってラブラブしている。
謎だ。
「なんだい?」
しどー君もよく質問を受ける側だが、委員長はアブノーマルな質問も受け付けるということが大きな違いだ。
マジメガネな私の彼氏は風紀委員、質問者側が話せないことだって出てくるし、彼自身の性格的に背景を考慮しない正論しか話せない。
ちなみにしどー君も委員長と妹ちゃんやお嬢との風紀の件で何度も衝突している。
まぁ、それはマジメガネ時代のしどー君が杓子定規したのが多分にあるから、庇わないが。
というか、過去を庇うと私としどー君自身が学校公認でイチャイチャしている現在に矛盾が出る。
「怖い顔しないでよ、質問しにきただけなんだからー」
そんな委員長の顔が私を見るや、一瞬だけ、厳しいモノとなった。
向かうところ敵無しな彼でも私は警戒に値するのだろうか?
そう逆に考えて気を楽にする。
さておき、笑みを飛ばして警戒を解こうと試みながら言う。
「ちょち聞きたいんだけど。
男の二股ってありだと思う?」
目が点になる委員長は珍しい。
してやったりだ。
「……つまり、風紀委員の彼が二股してるってことかい?」
私のことを探るような目線で問い掛け。
敵対や策ならば、こんな弱味になることは言わないだろうと、思考が回っているのが目に見えて判る。
とはいえ、常識はずれな問いだ。
「違う違う、させていいか悩んでるんよ。
プロポーズうけたんだけど、えへへ。
ビッチとしては男としても成長して欲しいからねー」
合点がいったように私を観てくる。
こういう時、ビッチという肩書きは便利だ。
というか、ノロケがウザいと目線で言われている気がする。
ざまぁみろ。
「委員長、二股どころか、ヤマタノオロチらしいじゃん?
だから聞いてみたかったのよ」
それを聞いた委員長の口許がバッテンになる。
どこぞのゲームの兎を思い出す。
「どんな噂だね、それは」
「妹ちゃんにお嬢、金髪美少女中学生と歩いている姿も見たとか聞いてるわよー?
あと、京都市内で小学生」
最後の言葉を聞いた彼の動きが変に思えた。しかし、突っ込まない。
私の経験的シグナルが触ってはいけないと感じたからだ。
藪蛇しかねないし、今回の目的はインモラルな質問に対してと立ち位置の確認が主だ。
「で、どう?」
「……そもそもに美怜とはそんな中ではないのだがね?」
「え、妹ちゃんとズブリしてないの?」
ちょっと意外だった。
妹ちゃんの目線からは恋する雌……つまり、私の妹である燦ちゃんと同じ感覚を覚えたからだ。
とはいえ、私の勘がズブリに関しては嘘を言ってないな、こいつと感じる。
「近親相姦になるだろ?」
常識的な発言だ。
だが、その発言は何となく嘘っぽい。
多分だが、Cをしてないだけで、他のことをしているのではないかと思う。
そもそも妹ちゃんがクラスでキスを委員長に求めるぐらいだし、寝間に一緒に入っているのも聞いている。
しどー君にキスの件を問いただされた時、家族愛を決め付けるのかね? っと反論していたので、ギリギリのラインは守っているのかもしれん。
「シスコン、ブラコンだからてっきり」
「はぁ……それらは君の言うビッチな関係は当てはまらないのだがね?」
私の浅慮と見せかけたレッテルの根拠を晒すと、相手は安心したように呼吸が漏れる。
委員長達のコンプレックスに関しては、学校内共通認識だ。
特に怪しまれるような所ではない。
「さておき、結論的には君ともう一人の女性次第では?
あとは彼氏本人のやる気」
見解が一致する。
元々、私のスタンスもそうだ。
今回、相対した理由の一つは、本気で私の事を愛してくれていると言ってくれたしどー君に対して、本当に妹をけしかけるべきか悩みが出てしまったのだ。
妹の初物破るのを躊躇している本人に相談することも出来ないし、真剣な二股なんぞビッチ側で質問できる話でも無い。ましてやパパママなんかに相談できない。
すると消去法的に絶賛ヤマタノオロチなインモラル委員長しか選択肢が無かったのだ。
「ふむふむ。
私は妹ならオーケーだから……」
「それ以上の発言は聞かなかったことにしていいかい?
委員長として、見過ごせなくなる可能性がある。
風紀委員の彼にも悪いだろう?」
インモラル野郎がマジメに諭してくるので、ちょっとイラっと来る。
とはいえ、私にそう忠告してくるという事は私を敵として見なしていないということだ。
これも確認したかったのも一つの目的で、できたのは大きな収穫だ。
やはり話をすればどんな人か、何を考えているかが判るし、ありもしない妄想で怖がっていることも多々あるのだ。
クラス内で苦手意識を持つ人物は減らしておくに限る。
「あー、めんごめんご。
さんくす、委員長。さんこーになったわ。
今度、何かで埋め合わせたげる」
心底要らなそうな顔をしてくるので、お嬢と妹ちゃんに男の喜ばせ方を教えることにする。これぐらいは恩を売っても/嫌がらせしても許容だろう。
なお、しどー君も委員長に、燦ちゃんの件を相談していたわけだが、それは随分と後に知ることになった。





