24.一目惚な妹だけど、どうしょう……
落ち着いた。
そして現状理解《抱きついてる》。
顔から火が出て、再び落ち着きがなくなり、彼の胸の中から慌てて離れる。
「あのあの、お名前をお聞きしていいですか……?」
私は何てことになっていたんだろうと自己嫌悪し……、更には彼を見ると心臓がバクンバクンうるさく跳ねる。
それを誤魔化すように述べた台詞がこれだ。
彼は一旦、整った顔を怪訝そうにして何故か困惑を示すが、
「あぁ、確かに名前は言ってなかったね。
誠一だ。
誠に数字の一と書く」
「誠一さん……私は……」
「知ってる初音さんだろ?
初音の妹の」
姉ぇと敬称無しで呼び合える程度かつ私のことを話せる程に、仲がいいらしい。
援助交際相手の誰かだろうかと邪推をしてしまい、流石に失礼だと打ち消す。
同年代に大金を貢がせるような姉ぇではない。
多分。
「誠一さん、すぐ着替えてきますので、ちょっと待っててください!」
っとコンビニで下着を買って、トイレの個室へ駆け込む。
今履いているのを脱ぐと、
「うわ……」
引いた。
糸も引いてるし、私自身も引いた。
ぐちゃぐちゃで、メスの匂いが個室に立ち込める。
自分で出したとはいえ……自己嫌悪してしまう。
もう姉ぇのことをビッチと言えない気がする。
自分も性に貪欲だということが、嫌でも実感してしまった。
正直、痴漢は嫌だった。しかし、体は気持ちよいと反応してしまったのは否定出来なくなっている。
自己嫌悪が再び襲ってくる。
「……しっかりしろ、自分」
頭を振って邪念を撲滅し、ささっと着替える。
「お待たせしました」
「別に、大丈夫だ。
何かあったらことだし」
コンビニ前、待っていなくてもいいのに、待ってくれていた。
その事実が私を嬉しくする。
「初音さんの方こそ、大丈夫かい?」
「はい。
……先ほどはありがとうございました。
その、はい、みっともない所もお見せしまして……。
抱き着いたり」
「いや、初音さんが無事でよかった。
それに僕の胸程度で落ち着いてくれるなら安いもんさ。
困っている人は見捨てられん」
私を観て彼が微笑んでくれる。
――トクン。
心臓がうるさい。
さっきからずっとこうだ。
頬も熱をもってそうな感じだ。
「顔が赤いが大丈夫か?」
言われ、右手でおでこを触られる。
ヒンヤリとした感触が私に伝わり、気持ちよくなり、
「ふぁ……」
瞬間、思考が溶けた。
先ほど痴漢と会った時のような快感が体中に行き渡り、足元から崩れ落ちそうになる。
ただ大きな違いがあった。
(もっとして、して欲しい……)
心の底からその手に身を委ねたくなっている自分がいた。
「いえ、だ、だ、大丈夫です」
慌てて、離れ、深呼吸。
(すぅ……はぁ……)
落ち着く。
そして面白そうに私を観てくれている彼と目線が会うと、胸がまた跳ねた。
制御不能だ。
どうしたんだろう、私は。
「ぁ……」
お腹の奥が更に大きくトクンと鳴った気がした。
脳裏に思い出されるは、姉ぇとしどーさんの情事。
私も、この誠一さん……っと、したいと浮かんだのだ。
初対面にも関わらずだ。
ハシタナイと感じる自分は居ない。
それどころか、この人が運命の人なのだと、決め付けてそれに違和感がない。
一目惚れ、初恋というのはこういうことなのだろうか、そう自覚した。
「……あの、誠一さん」
「何だい?」
「今度、またお会いできませんか?
……その、今日のお礼をしたいので」
と、私は初めて男の人に誘いをした。
彼は悩んだ様子を、一瞬だけ、見せたが、
「判った」
っと頷いてくれた。
私の心が兎の様に跳ねた。
「連絡先も交換していいですか⁈
お願いします!」
っと、勢い余って誠一さんの胸元に携帯をグイグイと押し付けてしまう。
そんな様子を怒らずに、笑ってくれる。
やっぱり優しい人だし、同年代のクラスメイトに比べ大人びている感もあり、ますますカッコよく感じる。
「これでいいかい?」
「はい♪
ありがとうございます!」
っと、交換が完了する。
「おっと、そろそろ塾に行く時間だ」
「あ、私もです」
携帯の時間を観てお互いに気付く。
「送ろう、どこだい?」
聞かれ答えると、同じ塾だ。
嬉しくなりながら、隣で歩く。
クラスを聞くと、彼は一番上。
私は平均より少し上だ。
一緒じゃなくて寂しいという気持ちが沸く。
「……勉強できるんですね?」
「これしか取り柄が無いからね、初音にもよく弄られる」
また、姉ぇが話題に出た。
……気分が悪くなる。
イライラした感情には覚えがある、嫉妬だ。
「姉ぇがその……援助交際とかしてたのは……」
私の女の部分がそう言わせていた。
「知ってるし、今は違うことも知っている。
初音自身は悪い奴ではないし、初音のことを悪く言いたい訳でも無いだろう?」
「……はい」
諭すような口調に、ハッとさせられる。私は姉を貶めるところだった。いけないいけない。
「まぁ、それに関しては病気みたいなものだから。
少しづつ直っていくと思う」
話す話題が無くなり……塾についてしまう。
「ここでお別れだ」
「はい……」
お別れの時が来てしまった。
寂しく思い、手が震えてしまう。
「もし、帰り道で怖いようだったら、連絡をくれ。
隣で歩くぐらいは出来るし、京都駅までだったら送れる」
そんな私を観てくれたのか、突然の提案。
本当にこの人は優しいと、私の胸が熱くなった。
「……はぃ!」
そして思いっきり笑顔を向けることが出来た。





