EX:水着の買い物で彼氏をからかいますが、なにか?
「夏と言えば、水着よね」
と悩みながら、彼氏を女性水着エリアに連れ込んでいる私である。
四条河原町、OPAの中の水着屋である。
その彼氏はというと、元マジメガネのしどー君なわけでして、彼の顔は赤くなるばかりだ。
回りの女性からの視線に耐え切れないという様子で、ニヤニヤしてしまう。
私は基本、好きな人に意地悪をしたくなってしまうタイプなのだ。
「うーん、どっちがいい?」
っと、見せるは可憐なワンピース型とビキニ型だ。
色は両方、赤色だ。
情熱である。
「というか、どっちでエロいことしたい?」
「ちょ、おまっ!」
「よく考えてみなさいな、私がこういうのを買ったら、当然、やることはやるわけよ?
ビッチだし」
追い打ちしよう、そうしよう。
「それとも両方買って、興奮度でも計ろうか?」
彼がうつむいてしまう。
全く童貞でもないのに、初心よのう。
さておき、
「どっちでも良いとか言う答えは最悪よ?
それってちゃんと考えてないってことだから」
言いそうだったので、先回りしておく。
まだまだ異性経験なら私がアドバンテージを持っているのだ。
「……そっちで」
と指さしてくるのはビキニである。
いつも結構、大胆な選択肢するよね、しどー君。
「んじゃ、試着するから……」
私は意地悪な笑みを意図的に浮かべ、
「一緒に入る?
試着室」
「初音!」
流石に怒られたので、一人で入る。
そして上半身、下半身と共に装着し……ちょっと思った以上に下のラインが際どい。
今は試着用の肌色の下着を着ているとはいえ、ちょっとまずい。
下の毛は処理しているモノの、少し気を付けた方がいいかもしれない。
パレオが必要かもしれないと脳内にとどめておく。
ともあれ、しどー君に見せるだけだ、今は。
「しどー君、いるー?」
「あぁ、ここにいる」
「じゃぁ、じゃん!」
ビッチは度胸である。
カーテンをパシッと開けて、目の前にいるしどー君へとオープンしてやる。
「……」
「何か言いなさいよ」
「いや、何というか太もものラインが凄く艶めかしいし、ちょっと見えないか、それ」
デリカシーのかけらもない彼氏である。
私は流石に言われ、カーテンを閉める。
頬が赤くなっているのが判る。
「しどー君。
どうだった?」
「後ろを見てないからあれだが。
……凄くセクシャルな要求をされている気がして、ちょっと落ち着かない」
「家用に買うわ」
とはいえ、そう言われたら買わざる得ない。
頭が固いしどー君のそういった性的な感情を示すのは珍しいからだ。
「というか、今日使うから覚悟しておいて、しどー君」
求められていることが嬉しくなり、言ってやる。
彼は黙ったままだが、恐らくはうつむいて真っ赤であろう。
「結局、二着とも買っちゃった」
鴨川でカップル座りをしながら、ほくほくとした顔を彼に見せる。
いい買い物だった。
「買うと言ったのに……」
「いいのよ、私のだし。
それにね、私はしどー君のお金に恋をしたわけじゃないの」
ビッチの矜持である。
惚れた私が悪いのだ。
「それにしどー君には夜頑張ってもらわないとねー。
ふふふー」
ともあれ、自覚したことだが結構、貪欲らしい。
彼も体力があるのだが、テクニックが伴わない。
最近、色々、勉強している様だが、まだまだである。
「そういえば、名前で呼ぶの、全然、だめだよねー。
お互い」
「まぁ、いいじゃないか。
慣れない呼称より、慣れた方がお互いって感じがするし」
それにだ、と彼は続ける。
「それこそ、名前を呼ぶときはそれこそちゃんとした準備が出来てからしたい」
「ふーん、私、出来ちゃってるかもしれないよ?」
ぶっ、っと彼が噴き出す。
「嘘よ、嘘。
ちゃんと私もしてるし、しどー君も使ってるじゃない」
「とはいえ、100パーセントではないわけだよなぁ」
彼が悩み始める。
真面目過ぎる彼の性根を見誤った感じを覚える。
「やっぱりお互いに「ヤダ」」
しどー君が止める発言をしそうになったので言葉を重ねてやった。
「私、結構、貪欲なんだわ。
ビッチだし。
もし構ってくれないなら、誰か他の人に頼んじゃうかもしれないよ?」
ともあれ、彼はそんな私を見て、悲しそうな表情を浮かべてくる。
「なーんてね、しどー君、焦った?
私はビッチだけど、見境なしじゃないわけよ。
でもね、ちゃーんと構ってほしいの、判る?」
「判った。ちゃんと構う」
そう素直なのはしどー君のいいところだと思う。
ふと私の体が包み込まれる。
「ぇ……」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
私の手元にあった、水着の入った袋が落ちた。
「ちゃんと構うさ」
「あ……」
彼に抱き着かれていた。
心音が伝わってくる。
そして私自身の心音も聞こえてくる。
「しどー君、キスしたい」
「……いいさ」
躊躇いを見せてくれるが、ちゃんと度胸を見せてくれるのが私の彼氏だ。
ちゅっと、軽く啄ばむように当て、離れる。
「私にはもったいないぐらい、良い彼氏さんだよ、しどー君は」
彼の顔に朱が灯る。
全く可愛いやつであった。





