13.好きですが、なにか?
「謹慎三日」
次の日から三日、私は自宅にいた。
学校には連絡が行ったが、事情を事前通知していたのが功を奏したらしい。
今回は、オジサンに他にも余罪があり、犯罪に巻き込まれそうになったということで片付いた。
また、しどー君が筋書きを書いてくれた。
きっぱりと後腐れをなくすために話を付けに行ったところ、オジサンが逆上したという話になったらしい。
普段の彼の行いは信頼性を得ており、それが真実だと好意的に受け止められた。
電話で記録が残っていたのも大きいとのことだ。
ありがたい話だ。
とはいえ、元々の原因があるということで謹慎三日だ。
「ごめんね、私につき合わせて」
「いいよ、別に」
電話では謝るだけ謝って、それですぐ切った。
しどー君も謹慎していた。
無茶なことをしたのでという意味で自戒せよとのことだ。
ちなみに親からは怒られなかったらしい。
それどころかよくやったと褒められたというから、どうなってんだろうか。
私の親?
……心配されて泣かれた。
予想してた反応と違ったので、すごく戸惑った。
娘を放任するけど、心配もしてくれているのは良く判った。
ありがたい話だ。
さておき、謹慎最終日の放課後が終わり、私はしどー君の家に帰ってきた。
「ふう」
玄関扉の前。
どういう顔をするか悩む。
彼の顔が浮かぶ。
三日会っていない間に、私はグルグルとしどー君の事を考えていた。
私を助けてくれた姿はカッコよかった。
確かに成すがままだったけど、それでも彼は私のヒーローだ。
つい一人でやる時に彼の顔が浮かび、燃え上がってしまった。
「ええい、出たとこ勝負!
ビッチはあきらめが肝心!」
インターフォンを押す。
すると待っていたかのように扉が開いた。
「「……」」
二人で顔を合わせると黙りあってしまう。
久しぶりに見る彼。
ドキがムネムネする、
いや、胸がドキドキする?
深呼吸。
ごめんなさいは何か違う。
だったら、
「ただいま」
これだ。
すると彼は眼を見開き、次には眼を弓の様にしてくれて、
「おかえり」
言ってくれた。嬉しくなる。
だから続けて、
「ありがとね、しどー君」
「どういたしまして」
そして礼を述べると彼は嬉しそうに微笑んだ。
心臓がどきどきする。
二人きりのリビングルーム。
買ってきたコーラを彼に渡し、私も自分のを開けて飲む。
会話は無い。
重い、私らしくない、どうしたものか。
「君が好きだ」
不意打ちだった。
「君が嫌いであろうともこれだけは伝えたかった」
真っすぐ私をみて言ってくれる、
私なんかに惚れるとか大丈夫か、このマジメガネ。
眼鏡は外してるが。
「ばーか」
「バカとはなんだバカとは」
「あんた、ホントに女慣れしないと危ないよ?」
呆れて言ってやる。
「女の言葉を真に受けたらキリないわよー。
大抵はその場の感情で話してるから」
「そうなのか?」
「そうなのよ。
でね、ちゃんと言った言葉の裏を理解してくれないと、拗ねちゃうんだから」
そして、ソファーに座る彼の隣へと腰を落とす。
「つまり、あんたのことを嫌いって言ったのはね。
その言ったのわね……」
言えよ、私。
「うん、私もしどー君のことが好きなんだわ」
言い切れた。
言ってみると案外簡単な事なんだとスッキリした。
「最初は真面目くさって固いやつかと思ったら、案外優しくて、色々してくれて……。
と思えば心に熱いモノを持ってる人間臭さもあって、うん、観てたら好きになっちゃのよ。
いい、私はしどー君のことが好きなの」
「あ、ありがとう!」
彼から抱き着いてきてくれるのは初めてだ。
いつも私から胸を押し付けたりするだけなのに。
「でもね、しどー君、私なんかでいいの?」
「どういうことだい?」
「だって、私、ビッチだよ?
しどー君みたいな真面目君から見れば汚れてるわけよ。
もっと普通の子の方がいいよ。
しどー君が良ければ妹を紹介するわよ?
真面目同士、気が合うだろうし」
それを聞いた彼は顔を真っ赤にする。
そして、私を抱く力をもっと強くする。
「馬鹿を言うな!
初音さんみたいにちゃんと色々真面目にしてくれて、慰めてくれて、そんな君に惚れたんだ!
確かにエッチなのはどうかと思うが、それも初音さんだろ?
ビッチな君も含めて自分は初音さんの事が好きなんだよ!」
怒られた。
頬が熱くなる。
だって、こんなにも求められて嬉しくないことはないだろう。
それに彼は真面目だ。
本心なのは判っている。
「ふふふ」
笑みが浮かぶ。
感情から来たもので制御できない。
嬉しい。
ヤバい、ヤバい嬉しい。
「しどー君、ありがと」
そして衝動のまま、私は彼の唇を奪った。
キスは初めてだ。
人生で。
「ファーストキスなんだなー、実は」
「それは嬉しい……!」
本当に嬉しそうに言ってくれるの、私も嬉しくなる。
「じゃぁ、自分からも……」
「はいはい、緊張しない。
あと、眼は閉じない方がいいわよ?」
「わかった」
真面目腐った彼からのキスが私のセカンドキスだった。
それは長いキスだった。
本で読んだテクニックで口の中に舌を入れてやったら、まけじと絡めてきた。
私もビッチのプライドがあったので対抗する。
「「はぁはぁ」」
そしてお互いに息切れして離れ、顔を見合わせる。
「しどー君へたくそね」
「そりゃ、そうだ。
僕も初めてだし」
「知ってた」
笑いあう。
「しどー君」
「何か?」
「私の初めて、貰って?」
と、彼のをさすりながら言ってやった。
顔をいつも通り赤くしてくれるので安心した。
「大丈夫よ、リードするから。
ゴムも買ってあるし。
それとね、私は名前で呼んで?
ちなみに某ボーカロイド読みしたら殺すから」
そしてソファーの上に移動、私が彼の上に跨っている形だ。
好き同士になったとはいえ、彼はマジメガネだ。
私から押し倒してやった。
「私を触るの自体は初めてじゃないでしょ?
そんなに緊張しなくても」
「いつも服の上からだったろ……」
っと、彼の手を取り私は笑む。
ガチガチに固まった手。
確かに胸も生で揉ませたことはない訳だが。
胸でした時は触ってこなかったし。
「しどー君。
好きにしていいんだよ?」
と促す私も緊張はしている。
流石に初めてだ。
ブラジャーを半分脱ぎ、シャツも前を止めていない。
オジサン達はこれで興奮したが、マジメガネの彼はダメなようだ。
「シャワーぐらい浴びた方が……」
「据え膳なのに、待たせる気?
いくじなしー」
空いた左手でスカートをたくし上げてやる。
ひんやりとした外気が私のデリケートな部分を晒す。
「はいていない⁈」
「そりゃ、ノーパンできたもの」
私だって覚悟してる。
実家からノーパンで電車に乗った。
当然に見せる以上だって、
「ほら、観て、しどー君?
どうなってる?」
「とても、うん艶めかしい」
「……この三日間ね、しどー君のこと思ってたら、濡れっぱなしになっちゃたのよ?」
と、自白したら興奮してくれたしどー君であった。なお、四回戦までした。
うん、なんというかスゴかった。
こうして私たちは付き合い始めたのであった。





