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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
96/200

94 南の森の報告

ドーラと一緒に一旦外へ出る。

特に誰かが着いて来るということは無かった。

いきなりで信用されるとは思わないが、その他の視線をいくらか感じるから、監視はしているのだろうと思われる。


「ドーラはイチとゼンに説明しといて。俺はシロとクロを預けてくるから。」

「あいあいさー。」


ドーラに説明を任せて、俺は建物の右側に周る。

石壁を回りこんだ先に馬車が停めてあった。



「何か用かな?」


子供に話しかけられた。


「この子達をしばらく預けたいのですが。」

「お!従魔ですね!立派な子達ね。あら?この子角がないわね。よしよし。そうなのねー。よかったわねー。」


その子は物怖じすることなくシロとクロに近付き頭や顎の下を撫で付けていた。

クロの角が無いことにも気付いているようだが、シロとクロも満更でも無さそうに身をゆだねていることから特に問題は無さそうだ。

と言うか話してる?


「シロ、クロ、ちょっとここで待っててくれな。」

「にゃー。」

「ブルルー。」

「頼んでもいいかい?」

「大丈夫だよ。あ、冒険者よね?一応カード見せてもらってもいい?」

「ああ、はいこれ。」

「どうも。・・・ソーマ君ですね。この子達は預かってるね。カード返すね。」

「じゃあよろしく。」

「はーい。」


なんとも感じのいい子だった。

あ、名前も聞いてないや。

まあ、また後で聞く機会もあるだろう。





イチ達を連れて再度ギルドに戻ると奥の会議室に案内された。

そこには先ほどの天使カレリーナ様とお姉さんの方の受付嬢さんと黒縁メガネの七三分けでスーツっぽい服をかっちり着た如何にも出来ますといった感じの男性がいた。


「洗いざらい全て教えなさい。さあ!」


カレリーナ様が同じことを告げてきた。

段々とこの人は残念な人なのではと思えてきた。

天使だから許す!


「森にいた魔物のこと、でいいですよね?」

「そうよ!」


他の人にも目を向けて一応確認してみる。


「そうだ。最近南の森の魔物の分布が狂って来ているようで森の外にまで魔物たちが出てくることが頻繁に起きているのだ。そのため森の調査をした結果、上位種と見られるトレントの発見報告があった、と言うのが現状だ。その上位種について何か知っていると聞いたが本当かね?」


男性が話し出した。

なんだか少し上から目線な話し方というか、雰囲気を感じてやな感じだ。

ま、顔には出さないけどね。


「そうですね。」


どれだけ話すべきか。

手の内を晒す様な具体的な話はせずに魔物と森の状態だけ話せばいいかな?

そうと決めたら、早速。


「話す前に現物を見てもらった方が早いかと思うので・・・、はいコレ。」


俺はそう言って荷物の中から取り出した風を装って小さめな真っ赤な枝を取り出した。

実際はストレージリングから適当なサイズの枝を取り出しただけだ。


「これ・・・!!」

「まさか!!」

「こいつはあの森にいた真っ赤なトレントの一部です。」

「既に倒されたんですか!?」

「はい。街道を塞ぐ位置に出てきていて邪魔だったので。」

「吸血樹の変異種・・・。」


受付のお姉さんは枝を手に取り、そう呟いた。

【鑑定】持ちなのかな?


「吸血樹だと?魔の森奥地の魔物じゃないか。」

「魔の森ですって!?なんでそんなものが南の森に?」


男と天使が驚愕の表情を浮かべて呟く。


「吸血樹って知られてる魔物なんですか?」

「ごく稀にですが、魔の森に入った冒険者の方が一部を持ち帰るということがあるのです。一時期、この素材が上位のポーションの材料になるということで話題になったのですが、生息域が魔の森でも奥地の方でレベルも高かったため、多くの方が犠牲になったのです。」

「そうなんですか。」



「そんなに強かったっけ?」

「枝が多いからじゃないかな?」

「ただの剣やと斬り難そうやったやん。」

「ああ確かにー。」


後ろでうちの子達が一応小声でしゃべってるが、丸聞こえである。

もう笑うしかない。


「他の様子はどうだった?凶暴な魔物がいたとか、いつもは見ない魔物がいたとか、危険は無かった!?」

「えーっと、いつもかは分からないですが、魔物は多かったかなと思いますよ。一応とはいえ街道を歩いていたのに結構な頻度で遭遇してましたから。吸血樹以外は特に強力そうなのはいませんでしたね。吸血樹がいたところにはトレントが多かったくらいでしょうかね。」

「そう。他に危険は無かったのね。よかった。」


天使カレリーナ様は本当に心配をしていたようで、心底安心したようなため息をついた。

絵になるなぁ。


「あのー、ということは南の森の危険は去った、と言うことでしょうか?」


おずおずと言った感じで受付のお姉さんが聞いてきたが。


「それは分からないですね。トレントたちの主は排除できたと思いますけど、一時的な解決でしかないかもしれないですし。」

「それはもっともな意見だな。だが、当面の危険は去ったと考えていいだろう。よくやった。依頼を出していた訳ではないが貢献度を加味して特別報酬を用意しよう。また後日受付で受け取ってくれ。」

「特別報酬、ですか?」

「そうだ。ギルドは仕事の斡旋所ではない。付近の治安維持も役割の一つだ。今回の件はそれに当たろう。これに報酬を出さなければ信用問題だ。しっかり受け取るといい。」

「ありがとうございます。」

「うむ。」

「じゃあ、もういいですか?まだ宿を取ってないので・・・。」

「ああ、もう行っていいぞ。」

「ではこれで失礼します。」


俺はカレリーナ様とその他に礼をしてみんなを連れて会議室を後にした。

報酬がもらえるらしい。やったね。


「もうええん?」

「ああ。終わりみたい。よし、じゃあ宿を取りに行こう。」

「はい!」

「おー!」

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