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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
95/200

93 天使と出会う

トリスタの冒険者ギルドにやって来た。

ギルドの外観は奇抜で近寄りがたかったが、中は案外普通で安心した。

受付の人の対応も丁寧で一安心だ。

宿を教えてもらったが、何か聞きたいことがあるようだ。

なんだろう?





「カルポの町でDランクになられたみたいなのですが、ここへはザンビラ王国を通って来られた、と言うことでいいですよね?」

「ああ、いや。南の森を抜けて来たんですよ。」

「えええ!?あそこを抜けたのですか!?」

「?はい、そうですよ。」

「よくご無事でしたね。昨日調査から帰ってきた冒険者の方が真っ赤なトレントがいたってギルド内が騒然としてたんですよ。」

「へー。」

「真っ赤なトレントなんて聞いたこと無いからって討伐依頼を出すにしてもランクをどうするかって今揉めてる所で。あ、コレ言っちゃダメでした。忘れてください。」

「真っ赤か。その冒険者も見たんですね。近づかなかったのかな?」

「遠目で見ても明らかに異質だったから、引き上げたみたいです。依頼は調査だったので情報を持ち帰るのを優先したそうです。」

「へー。ちなみにその人たちのランクは?」

「ランクですか?Dですよ。最低でもCランクじゃないかって言われてましたよ。」

「Cランクでも上位陣でないと厳しいと思いますよ。レベル28の変異種だったし。」

「そうなんですか。・・・え?」

「そうなんですよ。」

「ええーーえーえーえーー!!」

「メリー!うるさいよ!」

「ひえー!すみませんー!でもー!」

「でもじゃない!受付嬢たる者常に冷静に処理していかないと捌き切れないよ!」

「真っ赤なトレント種がレベル28だって言うから。」

「は?」

「だからですねー・・・」



うーん。

目の前で新たに現れた職員の女性と受付嬢さんの間でコントが始まってしまった。

そんなに大声でやり合ってていいのだろうか?

秘密にしてたのでは?


「あのー。もういいですか?」

「ちょっとあなた!」

「はい?」


唐突に後ろから声をかけられた。

人がいるのには気付いていたが、野次馬か何かだろうと思っていたので気にしていなかった。

振り返るとそこにいは金の髪をなびかせた天使がいた。



「南の森の真っ赤なトレントについて何か知っているの!?知っているなら洗いざらい全て教えなさい!」



天使に詰め寄られた。



「ちょっとあなた。私の話を聞いているの!?」



更に天使が詰め寄ってきた。

手を伸ばせは届きそうだ。


俺が固まって反応しないでいると、天使は手を伸ばして俺を掴んできた。

あ、もう死んでもいいかも。



「ちょ、ちょっと大丈夫?聞こえてる?」



天使に心配されている。

もう死んでもいい。



俺が意識を手放そうとしたところで、



「兄ちゃん、何してるん?」

「ハッ!!」


ドーラに声をかけられた。


「兄ちゃん?」

「ドーラ。助かった。あまりの衝撃で危うく昇天するところだった。」

「は?」

「後で何でも買ってやるぞ。」

「?なんやよう分からんけど、貰えるもんはもろたるで!何がええかなぁ。で、この綺麗な人は誰なん?」

「え?」


振り返ると腰まである軽くウェーブのかかった金髪をキラキラさせ、勝ち気そうなこちらをジッと見ていた瞳と目が合った。

また意識を奪われそうになったが、何とか堪えた。

そう何度も醜態を晒してなるものか。

とはいえ。



「さっき後ろから声をかけられたんだ。南の森のことを教えてってさ。誰かは、残念、本当に残念ながら分からないかな。」

「南の森?吸血樹のことかいな?いい素材になりそうなやつ。」

「ドーラはそればっかりだね。」

「それがうちのいいところやんか。」

「そうだね。」



「コホン。そういえば名乗ってもいませんでしたね。失礼しました。私はカレリーナ・トリアストです。どうぞよろしく。」

「これはご丁寧にありがとうございます。我々は先ほどこの町に着きました冒険者のソーマと、連れのドーラです。」

「どうも。」


ドーラがペコリと隣で頭を下げると、そちらに目を向けたカレリーナ様は俺に向けていたのとは異なる優しげな目で微笑んだ。


まじ天使。


普通に惚れた。

一目惚れだ。

まじ天使にしか見えない。



「なあなあ兄ちゃん。この人絶対どこぞのお貴族様だよ!」


ドーラが小声で伝えてきた。


「え?何で?」

「何でってどう見てもええもん着てるし、周りの連中もみんな知ってそうな感じやし。」


一見冒険者に見えなくも無いデザインでありながら、確かに上質な生地で上品に仕立てられたミニスカートである。

すらりと伸びた美しい足とブーツも上質だ。

うん。最高だ。


周りを見るとほとんどの者が知っていそうな雰囲気で、一部尊敬の眼差しをしている者もいる。

それに隠れて卑下た目を向けている者もいた。

あいつは殺す。



「自己紹介は済んだのだから本題よ。洗いざらい全て教えなさい。さあ!」


押しが強いが、嫌いじゃない。


「ここででしょうか?」


俺は周囲を見回しながら尋ねた。

受付嬢たちの騒ぎから始まりカレリーナ様の登場と、周囲の目がこちらに集まっている。

そんな中であの森のことを話すのはどうなのか。


「そうねぇ。」


こちらの意図が伝わったのか逡巡が見られた。


「カレリーナ様。奥の会議室をお使いください。ソーマさんお願いできますか?こちらも詳しくお話を伺いたいのです。」


受付をしてくれた娘よりも年上のお姉さんが落ち着いた様子で声をかけてきた。

さっきは大声で叱り付けていたのだが、そんなことはおくびにも出していない。

プロだな。


「分かりました。でも外に連れを待たせているので呼んでもいいでしょうか?後、従魔を待機させておける場所とかないですか?」

「構いません。建物の横に周ってもらえば駐車場がありますからそこの係りの者に言付けてください。」

「そうなんですね。ちょっと行って来ます。」


ということで一旦、イチ達のところに戻ることにした。


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