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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
88/200

86 ワイルドディアー

「あ!兄貴!開けたぞ!」


ゼンが叫び走り出した。

それに付いてやれやれと言った雰囲気でシロが追いかけていく。

俺とイチとドーラはそれを追って、歩いていく。

決して走らないが。


見ると木々が開けて先には平原が見えてきた。

やっと森を抜けたようだ。



「うーん。見事に何もないなぁ。」

「せやねー。」

「ですねー。」



森を抜けると高い木々がほぼ無くなり、背の低い木々が所々に群生し、俺の腰くらいまである長い草が広がっていた。

見る限りでは生き物の姿は、遠くの方を飛んでいる鳥くらいしか見えない。



「草原ですね。」

「せやね。」

「日が落ちてきたね。」

「そうですね。」

「そろそろ野営の準備するん?」

「そうしようか。」

「町までって後どれくらいかかるんやろか?」

「森を抜けてから1日ほど歩いたところだって話だったけど。」

「どこ情報?」

「秘書子さん。」

「ああ、キサラ姉か。」



俺のイミフ発言もさらっと流すドーラ。

やるなぁ!


...悲しくなってきた。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





一夜明けて森の次は草原を進む。

昨夜はブルーホーンラビットの焼肉と煮込みに舌鼓をうった。

イチは煮込み時間がもっとあればよかったと言っていたが、ウサギ肉はホロホロにほどけ、口当たりもよく美味しかった。

ブルーホーンラビットの肉は鳥肉に近い味わいだが、鳥よりも脂が多く、野性味に溢れていた。

イチが選んだ香草ともマッチしていて、焼肉も美味しく頂いた。

肉まで青みがかっていたのはちょっと引いた。

捌きたてを知らなければ、痛んでいるようにしか見えない。

ゾンビ肉?

嫌な想像をしてしまった。

忘れよう。


はい。忘れたー。





草原を進みつつ、新たに取得した【検索】を片手間にし続けている。

このスキルも【鑑定】同様にレベルがあるため、レベル上げが必要だ。

コツコツレベル上げをしていこう。


スキルのレベル上げをしつつ進んでいると遠くの方の茂みに動物らしきものが見えた。

道からも離れているため、特にこちらから手を出すことも無いだろう。



「兄貴。あそこに何かいるよ。」

「そうだな。」

「行ってきて・・・「ダメ。」ちぇー。」


考えていたそばから喧嘩を売ろうとしていたゼンに却下を伝える。


「狩りが目的じゃないんだから無駄な狩りはダメだよ。被害が出ている訳じゃないんだし。」

「でもウルフとかは狩ってたでしょ?」

「あれはこちらに襲い掛かってくるからね。」

「邪魔者は排除ですね!」

「あ、ああ。」


イチが物騒になって来ている気がする。

一体誰のせいなんだ。まったく。

え、俺?


はい。忘れたー。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





さっきフラグを立ててしまったのだろうか・・・。


結構遠くの茂みにいた動物がこちらに向かって走って来ている。

動物ではなく魔物だったのは些細な問題だ。


「兄貴!」

「ああ、分かってるよ。みんな戦闘準備だ。」


それぞれ獲物を構えて準備する。

シールドの準備も万端だ。

魔物は大きな鹿のような姿をしている。

馬よりも大きな体をしており、頭には立派な角を生やしている。

それが数十匹ほどこちらに向かって土煙を上げながら走ってきている。

黄褐色、栗色、暗褐色など茶色系の毛に覆われ、角は金色に見える。

その集団の先頭に一際大きな角をした固体が走っている。

どう見てもボスだな。



名前:ワイルドディアー

レベル:28

種族:ディアー種

属性:風

スキル:闘気

説明:ワイルドディアーの成体。

馬と鹿を合わせたような見た目。

角の立派さが強さの象徴。角の折れた者は落ちこぼれと認識される。

広い地域に生息し、気性が荒く凶暴。

草食。




え、あれで草食!?どう見ても草食の顔付きじゃない。

ロールキャベツ系ですか?

ん?逆か。

肉巻きおにぎりかな?

ああ、おにぎり食べたいな。

今考えることじゃないけど、米は野菜ですか?

知らんって?

ですよねー。


他の固体がレベル20弱程度なのに対して突出してレベルが高いし、でかい。

スキル欄に【闘気】があるし、あの巨大な体躯だ。

どう見ても近接戦闘が得意そうだ。



そんなことをつらつら考えている内にどんどん接近して来ている。

衝突は不可避ですね。



「ブルファー!」



興奮した馬の嘶きのような唸り声が聞こえた。

なんでこんなに興奮しているんだ?

縄張りに入ったとかそんな感じかな?



「【闘気】スキルを持ってる!接近戦は気をつけて!」

「はい!」



ワイルドディアーの群れはボスの後を追って俺たちに突撃してくる。

その突撃を俺たちはそれぞれ回避し、散開する。


「あの突撃は厄介ですね。群れに飲み込まれたら大変そうです。」

「そうだね。シールドすら先頭のボスの【闘気】で突き破られる恐れがありそうだ。」

「ですね。ちょっとずつ減らすしかないですかね?」


イチが疑問を口にした直後、俺たちの間を通り過ぎたワイルドディアーたちが反転して停止した。


「え。止まった?」

「どういうことでしょう?」


再突撃を仕掛けてくると思ってたんだけど、どういうことだ?


「兄ちゃん!撃っていいんかな?」

「ちょっと待って!何が起きるか分からないから迂闊に攻撃しないで!ゼン!行くなよ!」

「はーい。」


突撃しそうになっていたゼンを引き止めてからワイルドディアーたちの様子を伺うのだった。

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