82 なんかでた
森に入って2日程歩いた。
4人共に神級称号の恩恵を受けているからか、問題なく進めている。
シロは言わずもがなだ。
森に入ってから、度々魔物の襲撃を受けている。
襲撃と言っても事前に接近をシロが感知しているため、奇襲や不意打ちはほぼ無い。
野営時に植物系の魔物が出てきた。
ドーラが襲われたやつだ。
それ以来、ドーラはウェイブを見つけたら根こそぎ燃やしたると息巻いている。
火に弱いので、下級の火魔法で十分燃やせる。
ストレージリングの分解機能でも、微量の魔石粉が取れるくらいで、今のところ使い道がイマイチなので燃やしてもオッケーだ。
ただのツタに擬態していたり、地面に這われていたり、枯れ草に擬態していたりと森を進むに連れて、しょっちゅう会う。
このウェイブという魔物はシロが感知し難いようで、シロの気配察知よりも先に俺が周囲を見回して鑑定眼で鑑定をして発見するケースが多かった。
擬態が上手いというのもあるが、弱すぎて気配が希薄なのも要因のようだ。
まあ、鑑定眼で見回せば、無意味なものになってしまうのだが。
その他はカルポの町の近くにもいたウェアウルフやファングボアなどの魔物がいたくらいだ。レベルは15~20くらいなのだが、中々の数の魔物が寄ってくるため、行商人が行き来できるような道ではない。
相当な腕利きが複数人で護衛する必要がありそうなのだが、ゼンとイチを連れて来た奴隷商はなぜここを通っていたのか疑問だ。
そういえば、まだストレージに入れたままだ。
どうしよう。
ゼンとイチを攫った本人とは限らないが、あまり丁重に扱うつもりも無い。
適当な所で火葬するか。
「ん?またか。」
「どしたん?兄ちゃん。またやつか!?」
「う、うん、まあそうだよ。」
「よし!うちが燃やしちゃる!」
「ドーラちゃんやる気満々だね。」
「当たり前や!あの雑草め!うちに絡み付いてきよってからに!思い出したら腹立って来た!兄ちゃんどこや!?うちの敵は!」
見ると、シロが既に火球を飛ばして燃やしていた。
「ああー!うちが燃やしたかったのにー!」
「ドーラちゃん落ち着いてー!」
「そうだぞ、ちょっと落ち着けよ。」
ゼンにも嗜められるとはね。
ドーラも相当きてるみたいだ。
「あ。またいた。」
「!今度こそうちがやるー!」
「はいはい。そこだよ。」
ドーラが呪文を唱えるとスフィアから光が溢れ、文字を形作っていく。
「・・・、フャイアボール!」
ドーラの掛け声と共に火が生まれ、作り出された火球が俺が指示した場所に吸い込まれるように飛んでいく。
ドーン!!!
着弾した火球はその場にいたウェイブを飲み込み、燃やし尽くした。
跡には多少の灰が残るのみだ。
南無。
「ドーラ、やり過ぎだ。そんなに火力を上げなくても十分だろうに。」
「火力はうちの怒りの表れやんか!これでも足りんくらいや!」
「そんな調子だと魔力切れ起こしちゃうぞ。」
「切れたら兄ちゃんに魔力ポーション出してもらうからええやん!ほれほれ、だしーや。持っとるんやろー?ニシシシ。」
「まったく。まだ大丈夫だろ?」
「大丈夫やでー。あんがと。」
「それにしても多いですね。」
「そうだね。道の近くにも沢山いるし。通る人が少ないんだろうね。」
「そうですね。馬車なんかだと、跳ね飛ばしてしまいそうですし、刈られていないんでしょうね。」
「うちが全部刈っちゃるでー!」
「そんな無駄なことしてないで、先を急ぐよ。」
「はーい。」
またしばらく歩いた。
「にゃー?」
「うん?どうした?シロ。」
「にゃー。」
「何かいる気がするのか?」
「にゃー。」
シロが自信なさげに鳴いて教えてくれた。
「どうしたんですか?敵ですか?」
「多分そうみたい。シロが自信なさげだけど何かいそうだって。」
「シロちゃんが分からないって、植物系でしょうか?獣系だったらすぐわかるみたいですし。」
「なんやまた雑草どもか?うちが燃やすで?」
「多分違うよ。雑草より強いやつだと思う。シロ、方向は?」
「にゃー。」
シロが示した方向を望遠鏡で見てみる。
森の中なので見通しが悪いが無いよりはいい。
周辺を細かく見ていると鑑定眼に反応があった。
名前:吸血樹【変異】
レベル:28
種族:トレント族
属性:水
称号:堕落
スキル:堕落
説明:吸血樹の変異種。
幾多の動物の生き血を啜り、進化したトレント種。
その身は紅く染まり、燃えているようだが火属性ではない。
-- スキル【鑑定眼】が成長限界に達しました
-- スキル【検索】が派生しました
お。なんか出たな。




