80 竜肉
1年越しの衝撃事実の発覚からしばらく進み、何度かあったウルフ系やボア系の襲撃を危なげなく退けた。
獣系の魔物しか出てきていないが、どうなんだろうか?
ゴブリンやオークと言った亜人系の魔物が出ないのは元々いないのか、それとも・・・。
日が傾き始め夕暮れが近づいて来たので野営の準備を始めた。
いくつか岩が転がっている場所を見つけたので、そこを本日の野営地にした。
通る人がほぼいないため、全く開けていないし、地面の上には石や木の枝が散乱しているため、その辺りの整備からしないといけない。
カルポの町で準備しておいた草刈り鎌や鉈と箒を使って手分けしてスペースを作っていく。
「うー。兄ちゃんー、切りがないよー。」
「ドーラ、文句言ってないで手を動かせー。」
「うりゃりゃりゃりゃりゃーーー!」
「ほら、ゼンを見習えー。」
「兄ちゃん、心がこもってないよー。」
「仕方ないだろー。俺もめんどい。」
「はぁあー。」
「ドーラちゃん、元気出してー。美味しいご飯作るから!」
「いっちゃんのご飯だけが楽しみだよー。」
「イチのご飯目指してがんばろー。」
「うりゃーーー!」
「うへー。」
文句を言いながらも地面の石ころを避けてスペースを作り、テントを用意する。
手ごろな石を組んで簡易のかまどを作り、テントの周りやかまどの周りの草を刈り取る。
きちんとスペースを作っておかないといざと言う時に動きにくくなるので重要だ。
今のところ整地ができる魔法は開発できていない。
そんな魔法が作れたら、便利なのだが土を動かそうにも森の中では植物が邪魔で難しいのだ。
無理やり動かそうにも中々植物の根というのは強力で、パワー不足になってしまう。
植物も一緒に上手いこと避けられるように出来れば何とかなりそうなのだが、今後の課題だな。
ゼンが張り切って草を刈りまくったおかげで結構なスペースを確保できた。
作ったスペースに既に組み立て済みのテントを出して、杭で固定してテントは完成だ。
「兄ちゃんのストレージリングって便利やんなー。立てたまんまテントを仕舞っとけるやなんて。」
「そうだねー。杭打ちするだけでいいから楽ちんだよね。」
「そうやって。大容量のマジックバックだって畳んどかんと入れられへんはずやし、ほんま規格外やで。」
「兄貴はすげーってことだな!」
「そうやねー。テントじゃなくて普通の家とか収納できへんのかなー?」
「いえー?流石に無理じゃないかなぁ?大きいっていうか地面にくっ付いてることになる気がするけど。」
「そりゃ地面を掘って柱立てたりとかしてたら、難しいかもしれへんけど、箱型だったらいけるんとちゃう?」
「箱・・・。あぁ、確かに。家というより、大きな箱として考えればいけるか・・・?まあすぐには無理だね。」
「まあなぁ。流石のうちも家は建てられへんし、大工さんにでも相談してみんといけんね。」
「そうだね。町に行ったら聞いてみようか。」
「そうやそうや。石造りの家とかならスペースさえあれば、草刈りとか石を除けたりとかせんでよくなるし、快適やで!」
「単純にめんどいだけってことだね。」
「それもある!」
「ソーマ様ー、みんなー。ご飯できましたよー。」
「おっ!じゃあご飯にしよう!」
「おー!いっちゃんのご飯やー!」
「飯だー!!」
「にゃー!!」
今日の晩御飯は、初日と言うことで奮発して劣等地竜のステーキと野菜スープとパンだ。
みんなの防具にも使っている俺たちが今倒せる中では最高位の魔物肉だ。
カルポ周辺では出会うことのない高レベルの魔物だ。
魔物は、種類にもよるがレベルが高いほどその身は旨味にあふれ、非常に美味だ。
特に竜種は例え劣等とは言えどもその身に強大な力を持っており、他の魔物肉とは一線を画す旨さだと言われている。
なので非常に楽しみなのだ。
ちなみに本日が初だ。
竜種の旨さうんぬんは冒険者ギルド近くの酒場で聞いた噂話だ。
たぶんあの呑んだくれたちも食べたことはないだろう。
カルポの町の近くには竜なんて住んでいないしな。
防具の加工にドーラと四苦八苦していて、肉のことを忘れていたのだ。
劣等地竜の革のなめしを・・・、いやこれはどうでもいいか。
それより、飯だ!肉だ!
「そ、それが竜の肉・・・じゅる。」
「ドーラちゃん、よだれでてるよ。」
「おおぅ。失敬失敬。」
「はい。ソーマ様。どうぞ。」
「ありがとう、イチ。」
「はい///」
「・・・なあイチ、僕のは?」
「はい、ゼン兄。はい、ドーラちゃん。はい、シロちゃん。」
「お!やったー!肉だー!」
「うひょー!これが地竜かいなー!肉汁がすごいやん!てかシロやんのデカ!」
「にゃー!」
「じゃあ、いただきます!」
「「「いただきます!」」」「にゃー!」
はむ。
ジュワワアァァァ・・・・・
「・・・!!おいしーい!コレー!」
「・・・!!うまー!!」
「・・・!!うんまー!!」
「・・・!!お、おいしい・・・。」
「・・・!!ハムハム・・・」
俺たちはそれぞれ劣等地竜の肉の旨さの表現に苦闘していた。
軽く香草と一緒に焼いただけなのに、肉自体の旨味とイチ特製ソースの程よい酸味が非常にマッチしている。
噛めば噛むほどに肉汁が溢れだし、口いっぱいに広がる旨さ。
特に脂が旨い。
この脂ならゴクゴクいけそうだ。
「おお。これはすごい。」
「おいしいです、ソーマ様!!」
「兄ちゃん、これはやばいで。こんな肉食べたことないで!」
「そうだね。これは想像以上だよ。イチのソースも抜群だよ。」
「///えとえと、そ、そうですか?よかったです。へへ///」
「せやせや。このソースの酸味がなんとも言えんわ。色々引き出してるわ!すごいわ!」
「へへ。ありがとう。」
「うまー!!」
「にゃー!!けっぷ」
ゼンとシロも満足そうだ。
というかシロは既に完食してやがる。
まあ満足しているならいいが。
そんな大満足な初日の夕食だった。




