表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、英雄になる?  作者: 黒猫
トリスタ編
80/200

78 北への旅立ち

俺、シロ、ゼン、イチ、ドーラの4人と1匹が旅に出ることが決まり、お世話になった人たちに伝えて周った。

冒険者と言う職業柄、町からの出入りの際に移動することを伝えて周る必要は特にはないのだが、カルポの町には1年近く滞在していたため、ある程度知り合いも増えていた。

宿屋「猫の宿」のロドさん、サラさん、ルカちゃんには特にお世話になったし、冒険者ギルドのキサラさんにもよくして貰った。

キサラさんには、最後まで無理はしないようにと心配されたり、ルカちゃんには、涙を浮かべられて寂しくなるって悲しまれたりして調子が狂った。

女性の涙は俺には荷が重いよ。

他にも薬屋のおばあさんや武具屋のおっちゃん、屋台のおっちゃんに食堂のおばさん。

この町で出来た繋がり。

カルポの町のみんなはいい人ばかりだった。

人を騙したり、唆したり、強請ったり、威したり、そんな人とは終に出会わなかった。

荒くれ者のイメージだった冒険者ギルドでさえ、そんな機会にあったこともない。

どこまでもいい人たちだった。

ありがとうございました。




まあ、また転移で戻ってくるけどね。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「よし。着いたよ。」


カルポの町の近くから旅人の道標(トラベラーズマーカー)を使って北に広がる森の中に転移した。


「ソーマ様。ここってどの辺りですか?」

「ここは2人と出会った街道を更に少し進んだところだよ。そっちに道があるよ。」

「あ、ほんとや。道っぽいのが見えるで。」

「ほんとだー。」

「にゃあ。」


そう指差した方向の20m程先に木々が少し開けている場所が見える。

ほとんど使われることがないため、道はかなり悪い。

獣道よりはマシだが、馬車が通るには大変な道だ。

ここはカルポから歩いて2日程の位置だ。

町を出て30分での移動距離からするとこの世界では信じられないくらいの早さだ。

旅人の道標(トラベラーズマーカー)さまさまである。



「ここがソーマ様と初めて出会った場所・・・。」

「まあそうだね。ここから1時間くらい行った所だったかな?確か。」

「へー。兄貴は一人でこんなところまで来てたんだな。」

「まあね。シロもいるしね。」



イチはあの時のことを思い出しているのか、センチメンタリックになっているようだ。

そりゃそうか。

ゼンは平気そうだが、奴隷として運ばれ、狼たちに襲われ、死に掛けていた訳だし、あまりいい思い出ではないだろう。



「運命の場所・・・。あの時のソーマ様かっこよかったな・・・。」



どう声をかけたものかと考えていたら、イチは小さな声で呟いた。

あまりはっきりとは聞き取れなかったが、表情を見るとセンチメンタルと言うよりは恍惚といった感じで10歳がしてはいけない顔になっていた。

み、見なかったことにしよう。




「そ、そろそろ行こうか。」


少し引き攣ってしまった俺は悪くないと思う。


「「はーい。」」

「にゃあ。」


みんなから元気のいい返事が来たので進路を北に取って出発だ。



「いっちゃん!いつまでも惚けてないで行くよー!」

「へぅ!?あ、はーい!」


一人締まらない子がいたが大丈夫だ。

そう、何も問題はないのだ。




歩き始めて1時間程は何とも出会うことなく、黙々と歩き続けた。

先頭は周囲の索敵役のシロ。

次に前衛のゼンとイチ。

最後に後衛の俺とドーラが続く並びだ。

俺は剣も使って前に出たりもするし、このパーティだと壁役が今のところ居ないため、俺がやることもある。

俺の場合はシールドを多重に展開すれば身軽な壁役ができるのだ。

魔力量とシールドの展開速度に課題があるため、ゼンやイチでは壁役は今のところ難しい。

ゼンは盾をやめて双剣に変更した。

「もっとバッタバッタと倒したい!」ということらしい。

シールドがあるからいいんだけど、気をつけてね。



「にゃー。」


しばらく平和だったが、お仕事の時間だ。

シロが示す方向に獣の気配を感じる。

シロの警告にすぐにそれぞれの武器を取り、戦闘に備える。


「にゃ。」


どうやら相手はまだ気付いていないようだ。


「どうします?」

「シロ、強さは分かる?」

「にゃー。」

「流石にわからへんなぁ。」

「ドーラより弱いってさ。」

「ええっ!?そんな具体的に!?」

「冗談だよ。」

「ええっ!?強いんか!??」

「ふふっ。」

「ちょ、いっちゃん、笑いごとちゃうで。」

「ふふっ、でもドーラちゃん慌てすぎだよ。」

「せやかてー。」

「ごめんごめん。そんな強い敵じゃないから大丈夫だよ。」

「なんや、からかわれただけかいな。ぶーぶー、ひどいやんかー。」

「ごめんごめん。」

「これは後でお詫びの1つも貰わんとな。」

「はいはい。・・・そろそろ気を引き締めようか。」

「誰のせいや。まったくもー。」

「はは。・・・ゼン、いける?」

「おう!大丈夫!」

「数は少ない、4匹くらい。ウルフ系の魔物だよ。いつも通りにゼンが切り込んで、俺がフォローするから。イチとドーラは各個撃破を狙って、シロはそのフォローで。」

「はい!」「うん!」「にゃ!」



しばらく待つと現れたのはグレイウルフの群れだ。

数は想定通り4匹。

レベルは最大で18だ。

こちらにも気付いて突っ込んできた。


「行くぞー!」


ゼンが掛け声と共にグレイウルフの群れに突撃した。

ここぞと言う時以外はなるべく声は出さないようにと言っているのに掛け声を上げている。

後でお説教だ。


ゼンに続いて俺も突撃する。

ゼンに出鼻を挫かれたグレイウルフたちは二手に分かれて俺たちを囲むように動く。

たかが4匹で囲んでも意味はないだろうに。


分かれた一方をゼンと俺は追いかける。

もう一方にはイチとシロが向かった。

走るグレイウルフに後ろから接近する。

グレイウルフたちは自分たちよりも速く動く俺たちに驚いてウォンウォン鳴いている。

俺たちの方がレベルもステータスもかなり上なのだから当然だ。

簡単に追いついた俺たちはグレイウルフを斬りつけ、一撃で仕留めた。

イチとシロも同様だ。

ドーラが「うちの出番は~?」と嘆いていたが仕方ない。

この辺りに出る魔物では一人一殺で事足りてしまう。

もっと数が出れば変わってくるけどね。

まあまだ先は長いし、次がある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ