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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
ニューゲーム開始
76/200

75 Dランク

次は戦闘試験だ。

ギルドにある訓練場に集まった俺たちの前にボードを持ったギルドの職員数名と槍を持ったスピカさんがいる。


「よく筆記試験(笑)をクリアした!」


(笑)とか何だよ。


「次は戦闘試験だ。なに。筆記試験(笑)をクリアした諸君にとっては造作もない試験だ!呼ばれたものは中央に出たまえ。」


筆記試験(笑)のせいでこの戦闘試験も何かあるんじゃないかと疑ってしまう。

相手はスピカさんだ。

最初は30代くらいの槍使いのチョビ髭の男性だ。


「始め!」


審判役のギルド職員の合図でそれぞれ高速で槍を振るう。

スピカさんの槍捌きは分かっていたが、このチョビ髭も中々の槍捌きだ。

レベルは21で、技術も相応に伴っているように見える。

激しい槍捌きでチョビはスピカさんを攻めるが、悉く受け流されている。

しばらく、打ち合ったところで審判に他の職員が近づいていった。


「止め!そこまで!」


審判の声と共にチョビは礼をして下がっていった。

チョビが肩で息をしているのに対してスピカさんはまだまだ余裕そうだ。

どうやら普通の戦闘試験らしい。

ボードを持った職員が試験官なのかもしれない。

何を見ているのやら。




続いて他の受験者たちも試験を受けていった。

スピカさんは積極的には攻撃はしないが、隙があると軽く突き込んで来るため気は抜けない。

あの攻撃に当たったら恐らくは失格だ。

鋭くもない攻撃に当たるような者に合格はないだろう。

ゼンもイチもドーラも危なげなく戦闘を終えた。

特に闘気や魔法は使ってない。

最低限の実力を見ているだけのように思った。



俺は最後だった。

スピカさんはまだ余裕を残しているように見えた。



「始め!」


審判の合図で俺は飛び出そうとしたが、寸での所で踏み留まった。

スピカさんの気配が変わったのだ。

俺にも試験用の力でやって欲しかった。


「よし!」


俺は気合を入れ直し、走り出す。

同時にスピカさんも駆け出した。

剣と槍を切り結び、離れる。

俺は足を止めずに回り込むように走る。

スピカさんの槍が跳んでくる。

槍を弾き、懐に飛び込んで一閃。

スピカさんは体を軽く引いて避ける。

完全に見切られているが、追撃だ。

更に横薙ぎに一閃。

これも見切られるが、振り切る前に剣を無理やり止めて更に踏み込む。

体を捻って回避されたが、体勢は崩せた。

更に高速突きで追撃を仕掛けるが、今度は槍で弾かれた。

弾かれた勢いを利用して距離を取る。

短く息を吐き、再び走る。

スピカさんは迎え撃つつもりのようだ。

スピカさんの射程に入る寸前で更に速度を上げる。

当社比1.5倍だ。

いきなり速度を上げた俺にタイミングを崩されてスピカさんの槍のキレが落ちた。

俺はそれを軽くかわし、剣を突き出した。

スピカさんの肩に当たると思われた剣は、闘気を纏ったスピカさんの槍でガードされた。

ずっこい。


「止め!そこまで!」


審判の終了の合図で試合は終了した。

あー、疲れた。


「ありがとうございました。」


礼を言って下がる。

これで戦闘試験は全員終了だ。

結果はいつ分かるのだろう?


「ソーマ様。お疲れ様です。どうぞ。」


イチがタオルを差し出してくれる。


「ありがとう。イチ。気が利くね。」

「いえ。へへへ//」


照れたイチもかわいいね。


「兄貴。すごかった!纏ってないのにびゅんびゅんって!」

「はは。ありがとう。気を抜いたらコロっとやられそうだったからね。」

「兄ちゃん、流石やな!」


そんな話をしているとギルドの職員から声がかかった。


「みんな集まってくれ。」


「Dランク昇格試験の結果だが、ここにいる8人全員合格だ!」

「っし!」「やったー!」「やった!」「しゃー!」

「各自受け付けに行ってギルドカードの更新手続きをしてくれ。カードを受け取ったら晴れて君たちはDランク冒険者だ。」

「知っての通り、ランクDの冒険者は別の町に行ってもランクが保障されている。Eランク以下だとやり直しになるにも拘らずだ。それは君たちランクD冒険者がこの町の代表である、と言うことでもある。その事を十分認識し、責任ある行動を我々は望んでいる。」

「冒険者は自由である。冒険者は人々の夢である。ランクに恥じぬ冒険者になれ!」



冒険者ギルドの職員さんが交互に訓示を熱く語っている。

その熱に当てられてゼンもイチも俺もこれからも頑張ろうと胸に秘めたのだった。

秘めるだけだけどな。




他の冒険者が受付に向かったので、俺たちもそれに倣って受付に向かおうとした時にスピカさんに声をかけられた。


「いやー、ソーマ君参ったよー。まさかあれ程腕を上げているなんてね。ついつい纏ってしまったよ。」

「あ、お疲れ様です。ありがとうございます。でも酷いですよ。俺の時だけ気配が違ったじゃないですか。」

「ははは。ごめんごめん。神童と名高いソーマ君がどれくらい腕を上げたか見たくてねー。ついつい本気になっちゃって。」

「試験なんですから、やめてくださいよー。」

「いいじゃないか合格したんだからさ。」

「一撃でやられてたらどうするんですか。最初の一振りも強かったですよ。」

「でもしっかり防いでいたじゃないか。いやー驚いたね。君がどこまで行くのか楽しみだよ。ところで何で本気を出さなかったんだい?使えるんだろ?闘気。」

「他の人が使ってなかったですし、単純に技術で勝負したかったので。」

「使ったら余裕だった?」

「余裕と言うか力技にはなってたでしょうね。まだ技術と噛み合い切ってなくて直線的になりがちなんです。」

「・・・よく分かってるじゃないか。君の言う通りだ。そこまで分かっているなら何も言うことはないかな。これからDランク冒険者としてしっかり冒険しなよ。」

「はい!ありがとうございます。」



どうやら気を使ってくれたようだ。

ダスターさんから何か聞いていたのかもしれない。

ありがたい。


俺たちはキサラさんのところへ行きランクDになったギルドカードを受け取り、晴れてランクDの冒険者になった。

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