74 筆記試験・・・?
Dランク試験当日。
時間にギルドに行くと会議室に案内された。
俺たちの他にも既に4人ほどが緊張した面持ちで待っていた。
それを見たゼンとイチも背筋を伸ばして緊張しているようだ。
「ほら、みんな座るよ。」
「「は、はい。」」
俺たちは部屋の中頃に座って一息ついた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ちゃんと勉強してきただろ?」
「そ、そうだよね!」
「うんうん。」
「せや!」
「じゃあ、深呼吸しようか。吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー。」
「「「すー、はー、すー、はー。」」」
部屋のあちこちで深呼吸をしている息が聞こえた。
みんな緊張していたらしい。
他の4人は俺とも年が近いが恐らくはみんな年上だ。
俺だってまだ未成年だし。
上の人でも20代前半だろう。
いい大人とも言えるが、筆記試験なんて普通はないから緊張しているのだろう。
それから開始時間までに更に5人が入ってきた。
多くない!?
新たに入ってきた人たちは、結構な年上に見えた。
30代から40代の人もいる。
もしかして、この試験って難しい!?
その人たちはみんな会議室の前の方に座った。
やる気満々だな。
急にドキドキしてきたが既に後には戻れない。
試験問題が配られる。
普通の筆記試験のようだ。
試験が始まり、とりあえず一通りパラパラと捲ってみる。
んー?
問題数はそこそこあるが、教本よりよほど簡単な問題ばかりだ。
あの分厚い教本はなんだったのか。
本はそれほど安いものでもないのに試験の度にあの教本を配っていたら、お金的に大変ではないだろうか。
と関係ないことを考えつつ、さらさらと解いていく。
1問目は冒険者の心得。
冒険者たるものいつも不測の事態に備えることが求められる。マルかバツか。
普通にマル。
この他、計算問題もあったが、簡単なお金の問題だ。
準備にかかったお金を足して、報酬額から利益を出すだけ。
こんなものかと思っていたら、後ろから敵意を感じ、咄嗟に頭を捻って避けた。
ビュン!
「アイテッ!」
俺の前に座っていた人に後ろから飛んできた何かがぶつかった。
その人は前のめりに机に突っ伏したまま起き上がらない。
名前:催眠弾
種類:魔法道具、投擲物
等級:普通
品質:低
属性:なし
説明:投擲用の魔法道具。
ぶつかった相手を眠り状態にする。
効果は低い。
なんて凶悪な道具なんだ。
と思っていたら、またしても後ろから敵意を感じた。
振り返るといつの間にかギルドの職員が8人も並んでいる。
もちろんその手には催眠弾。
不測の事態だー!!
先ほど当てられた人はもう目を覚ましていて何が起きたのか分かっていないようだ。
また後ろから飛んできた。
また避ける。
また前の人に当たる。
また前の人は寝る。
む、無限ループだ。
イチも催眠弾の毒牙にかかって、机に突っ伏している。
他の冒険者たちも避けたり、寝たり、防御したりしている。
後から来た冒険者たちは兜まで着けての完全武装だ。
そのためか!!
ゼンの方は何とか避けられているが問題が解けていない。
イチとドーラの方は中々避けられていない。
実戦でのスタイルが影響していた。
あの2人は一撃必殺が基本戦術だからな。
何もなければ時間内に全て解くのは問題ないだろうが、これでは集中できない。
ゼンは避けるのが楽しくなってきていて既に問題を解いていない。
イチとドーラは避けるのを諦めて起きてすぐに問題を解いて、また寝てを繰り返している。
諦めないで!!
とりあえず、ゼンを睨み付け、問題を解かせる。
ビクッとした後、素直に解き始めた。
上手いこと避けている。
イチの方は、どうやら闘気を纏って耐え抜くつもりのようだ。
闘気に雷属性を混ぜて後ろに薄く広げている。
催眠弾が静電気のようなものを受けて不発に終わって床に落ちている。
闘気の扱いが上手くなったなー。
ドーラの方は普通にシールドを張っていた。
攻撃力のない投擲武器なんて何の意味もない。
でも、回避については2人の課題だな。
どうしたものか。
筆記試験が終了した時、13人いた受験者の内、起きていたのは7人で全員が合格だった。
もちろんゼンとイチとドーラはその中に含まれていた。
あ、俺は寝てました。
避けるのも防御するのも面倒だったから、解き終わったら残り時間は寝ていた。
大学の試験でも終わったら時間までよく寝てたなぁ。
もちろん合格。
合格者は全8名で、若手1人、30代3人と俺たち4人だった。
Dランクのハードルは高いのか?
少なくとも次回からは内容が変わるだろう。
シールドの魔法道具が普及したら簡単過ぎるからな。




