表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、英雄になる?  作者: 黒猫
ニューゲーム開始
73/200

72 護衛と情勢

「いいんでしょうか、こんな楽をしてしまって。」

「いいんじゃない?乗ってていいって言われてるしね。」


俺たちはカルポの町から隣町のサルポまでの行商について護衛依頼についている。

今は荷馬車の上で揺られている最中だ。お尻が痛い。

サルポまでは馬車で片道4日程かかり、途中で3つの村を通る。

売り物として、塩や食料、農具や雑貨が積み込まれており、メインは塩だ。

カリオ村などで採れた塩を運んでいるのだ。

初めての護衛依頼なのだが、これを受けたのには理由がある。

護衛依頼を達成しておくことが、冒険者ランクDへのランクアップの為の条件だからだ。

ランクDに上がるための条件は、討伐、盗賊退治、護衛、採取依頼の達成と筆記・戦闘試験で合格することだ。

討伐と採取依頼は頻繁に受けていたが、護衛依頼は受けたことがなかった。

盗賊退治は依頼として出されることは珍しく、見つけた時にって感じだ。

この辺りは盗賊が少ないから、達成できるかどうかはかなり運に作用される。

行商をしている商人に聞いてみても最近は目立った盗賊は聞かないらしい。

治安がいいのはいい事だ。

盗賊の溜め込んだお宝を根こそぎ頂戴するのはファンタジーの醍醐味なんだけどなー。

考えても仕方がないので、1つずつクリアしていこうと行商の護衛依頼を受けたのだ。



町を出て、馬車に揺られること2日。

魔物に襲われることもなく、順調に村を巡って進んでいた。

遠くからこちらを伺っているような魔物や動物は見かけたが、特に何も起きなかった。

この辺りではこれくらいが普通らしい。


旅程中の食事は各自で用意することになっているが、夜は村の家に泊めてもらうか、村でテントを張るため、食料の調達も楽に出来る。

昼食は街道沿いで馬車を止めて、各自で取ることになっている。

俺達は護衛なので、見張りをしつつの昼食なので、イチが朝の内に作っておいたサンドイッチを片手に周囲の警戒を一応している。

外での食事はもっぱらイチが担当している。

宿屋のロドさんに弟子入りしてメキメキ腕を上げ、最近では町の食事処を巡ってレシピを増やしているらしい。

マヨネーズも完璧に再現してくれた。

俺のうる覚えレシピでも上手に仕上げてくる。

なのでサンドイッチもマジ美味い。


ゼンの方は、あれ、いない。

いつの間にかゼンの姿が消えている。

俺とは反対側を見ていたはずだが。


「イチ、ゼンはどこ行った?」

「そ、それが、「獲物だ!」といって突然走り出してしまって・・・。」

「またか。」


ゼンはどんどん落ち着きがなくなってきている。

元々、元気ではあったが、ビビリが改善してきたと思ったら、熱血漢が顔を出してきてどんどん脳筋に近づいている。

誰かゼンを教育してくれ。とほほ。


ゼンはすぐに戻ってきた。

手には七面鳥くらいの黄色い鳥が握られていた。

見たことない鳥だった。

カットバードという鳥らしい。

美しい羽は装飾品の素材としては高級品の部類だったはずで、肉の方も脂がのっていてまあまあ高級品だったはずだ。

もっと南の方の鳥だったと思うが逸れたのかな?

というか血抜きはどうする気だ。



「おおー!これは大物ですね!これはカットバードですな!傷も少なくすばらしい!」

「へへー!」

「ロドリゴさん、すみません。うちのバカが。」ゴツン!

「痛ー!!」


護衛中に勝手に狩りに出かけたゼンを叱る。

話しかけて来たのはこの商隊のリーダーのロドリゴさんだ。


「いやいや。こんな状態のいいカットバードは珍しいですしね。この辺りで入手しようと思ったら大変なのですよ。ほっほっほ。」

「珍しい、ですか?」

「ええ。もっと南の地域に行けばいるんですがね。恐らく長く続いてる戦争の影響で、南の方の国から流れてきたのでしょうね。」

「戦争ですか・・・。」

「お隣の国の話ですよ。最近は落ち着いてきたと聞きましたから、こちらまで影響することはないですよ。」

「そうですか。」

「ところで、そのカットバードはどうされますか。」

「そうですね。ここで血抜きするわけには行きませんから、良ければこのまま運んで貰えれば、お譲りすることも出来ると思いますよ。」

「?スト・・・がふっ。」

「ゼン兄はこっち。」


ゼンはイチに連れて行かれてしまった。南無。


「おおー!いいですとも!荷台にはまだスペースがありますからね!」

「ありがとうございます。肉は痛みやすいので、旅程中に食べてしまいましょうか。」

「え!よいのですか?売れば結構な額になりますよ。」

「いいんですよ。加工する時間もないですし、ご迷惑をかけたお詫びです。」

「ほっほっほ。若いのに剛毅ですな!」

「その代わり、周りの国の情勢とか教えてもらえませんか?」

「それくらい、いいですとも。」

「ありがとうございます。とりあえず、時間もないので出発しませんか?」

「そうですな。そろそろ出発しましょうか。よしみんな!準備が出来次第出発だ!」


ゼンが捕ってきた鳥1匹で商人の命とも言える情報を貰えるのはありがたい。

高級品とはいっても普通の鳥だから、狩ろうと思えば誰でも狩れるのだ。

高レベルの魔物素材に比べたら大した金額でもないので痛くもない。

それよりも周辺の情報の方が今は欲しい。

南には出身であるナンブラ王国があるから向かうつもりはないが、北や東がどんな情勢かは気になっていたのだ。

西は地竜の深谷と魔の森があるから除外だ。



その夜、カットバード料理に舌鼓を打ちつつ、周辺国の情勢を聞いた。

この国の南にはニードラ王国がある。

ニードラとナンブラは長年戦争を続けている。

俺も借り出されることになった戦争だ。

谷に落ちて俺は逃げることができたが、騎士学校にいた他の人間がどうなったのか。

あまり思い入れはないが、知り合いが戦争に借り出されていると思うとなんだか微妙な気持ちになる。

とは言え今はどうしようもない。

戦争に介入なんてできないし、移動するだけでも大変だ。

ロドリゴさんの話では半年くらい前から小康状態に陥っているらしい。

恐らく戦力不足でどちらも攻め切れないからだろう。


次にこの国の東だが、ザンビラ王国という国がある。

周辺の国との関係も良好でここ数十年戦争はないらしい。

農耕国家で小麦の産地となっている。

ザンビラ産のエールはこの辺りでは有名だ。

トローラよりも更に魔物の出現が少ない国で迷宮の数も少ない。

そのため、冒険者の数も少なく、代わりに農民と衛兵が多いらしい。

衛兵が多いのは、盗賊が多いからだ。

強力な冒険者がいない為、盗賊にとっては過ごし易い国なのかもしれない。

食料は持ってそうだし、盗賊退治も興味はあるが、あまりわくわく感はないな。

ザンビラ王国の南はどこもかしこも戦争中で、領土の取り合いが激しく、この1年の間にもいくつかの国が消え、いくつかの国が出来たらしい。

だから、今現在どんな状態かは分からないそうだ。

国が出来るってなんだ。



最後に北だ。

この国の北には深い森があり、魔の森程ではないが魔物が多く住んでいる。

一応街道が森を突っ切って抜けているが、殆ど往来はない。

抜けた先にあるのは交差点の町とも呼ばれる都市トリスタ。

ここは都市国家で、トリスタのほんの周辺のみが領土となっている代わりに、東西南に街道がつながっている。

トローラからは深い森を抜けなければならないが、ザンビラやその更に隣の国からも大きな街道が繋がっている。

また、東西の街道は行き来する為の唯一の道で、街道は細いがここを通らなければ東西の大国に向かうことが出来ない。

西の大国 軍事国家エスパーダ帝国

東の大国 光の国フラムウェル王国

トローラを含む中央の小国家群とは一線を隔すほど圧倒的な大国だ。

この2つの大国をつなぐ交通の要所となっているため、様々なモノが集まる。

集まるのは物だけではない。

ここ20年は起きていないが、それ以前には東西戦争の舞台となることも多く、度々占領され、放棄されを繰り返されてよく破壊されていた。

そのため、建物がちぐはぐで、増改築で継ぎ接ぎのような建物が多いのが特徴だそうだ。

北に竜の巣である天竜山脈があり、南西・南東には魔の森を抱えるため冒険者も多く、レベルが高い。

とりあえず重要なのはここ20年は戦争がなく、ここ最近もそういった話は聞かないということだ。

暗い話がないのはいい事だ。

西と東を間違えてました。

【誤】

東の大国 軍事国家エスパーダ帝国

西の大国 光の国フラムウェル王国

【正】

西の大国 軍事国家エスパーダ帝国

東の大国 光の国フラムウェル王国


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ