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俺、英雄になる?  作者: 黒猫
ニューゲーム開始
71/200

70 欠陥

ドーラが大熊に向かって引き金を引き、銃から轟音が鳴り響いた。

銃から発射された弾丸は大熊の首に命中し、首の一部を見事抉り取って突き抜けた代償に、辺りには銃から発せられた轟音と洞窟内であることによる反響で、凄まじい残響が木霊した。

残響なんて生易しいものではなかった。

シロがころりと目を回していた。

ゼンとイチが耳を押さえて目を回していた。

俺もドーラも耳がキーンとして周囲の音が聞こえなくなってしまった。

あ、光も消えた。

真っ暗だ。



イチが目を回してしまい、意識を失ったため、ライトボールが制御を失い、消えてしまった。

俺もまだクラクラしているが、このままでは奇襲を受けてしまいかねない。


「・・・マルチライトボール!」


自分の声すら聞こえないが、なんとかライトボールが発動する。

俺たちの周囲に6つの光の玉を作り、遠くに飛ばす。

ついでに光量も通常よりもかなり上げておく。

近くだと明るすぎて逆に見えない状態になるが、離れた位置からだとはっきりと姿を確認することが出来る。

暗い洞窟内だと簡単だが、有効な手段だ。



前方に居た大熊は地面に倒れていた。

熊は今どうでもいいのだが、首が抉れてそこから血が流れ出ているため、先ほどの音と血の匂いに釣られて他の魔物がよって来ないかが心配だ。



そんな心配がフラグとなったのか、ライトボールの範囲に狼の魔物が入ってきた。

レベル10のウェアウルフが3匹だ。

鼻がいい魔物だからか、光量過多のライトボールに気を取られつつも大熊に近づいている。

ドーラは放心状態だし、他のみんなはまだ目を回したまま復活していない。

ここは息を潜めて様子を見るべきか。



と考えていたら、後ろに飛ばしたライトボールの範囲にもウェアウルフが2匹入ってきた。

挟まれてしまった。

ピンチだ。



いや、そうでもなかった。

ウェアウルフが近づいて来ている間に耳鳴りは治まっていた。

めんどくさいので軽く片付ける。


「・・・ラピッド エアショット!」


風を切る音とともに5匹のウェアウルフに風の弾丸を叩き込む。

頭に風の弾丸を受けたウェアウルフたちは軽く吹き飛んで地面に落ちた。



「ドーラ!動けるか?」

「え、あ、うん。」

「よしじゃあ、移動するよ!」


俺はゼンとイチとシロを抱えて、とりあえず前方に移動する。

ドーラは俺の後をちゃんと付いてきているようだ。

前方に転がっていた大熊とウェアウルフ3匹をストレージリングに回収して、さっさとこの場を後にする。

後ろのは放置だ。

回収してる場合でもない。



そそくさと移動して、部屋のようになっている場所を発見したので、そこで休むことにする。


「ドーラ、平気?」

「う、うん。びっくりしたけど大丈夫。みんなは大丈夫かいな?」

「至近距離であの音を聞いたからね。ゼンもイチも獣人だから耳がいいし、シロは獣だし。」

「みんなには悪いことしたなぁ。外でも大きかったけど、洞窟内だと響くの抜けとったわ。」

「そうだね。俺もだ。サイレンサーとか必要だったなぁ。」

「?なんなん?サイレンサーって。」

「音を小さくする装置、かな?あんまり詳しくはないんだけど、確か空気室を・・・


・・・


「でもこれだと・・・」



・・・



「いやこっちの方が・・・」



・・・



「お!それいいやん!あ、でもこれが・・・」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「う、うーん。」



ここは・・・?えっと確か、ドーラちゃんの武器で攻撃してそれで、どうなったんだっけ?


イチが辺りを見回すとすぐ近くにご主人様とドーラちゃんがいた。

なにやら2人で盛り上がっているみたい。


「あの。ソーマ様?」


「それもいいね!できるかな?」

「たぶん!時間かかるかもやけど何とかするで!」

「おお!いいね!楽しくなってきた!それじゃあこっちも・・・!」

「・・・おお!・・・」

「・・・でさ・・・」


どうやら2人だけですごく盛り上がっているみたい。

2人だけで。


「ソーマ様っ!」

「ひゃい!」


やっと気づいてくれた。


「イチ!目を覚ましたんだな。よかったよ。調子はどうだ?」


振り向いたご主人様の優しい眼差しを見るとほっとする。

ご主人様にご心配をおかけしてしまった。

反省しないと。


「あ、はい。大丈夫です。ちょっとクラクラしますけど。すみません。ご心配をおかけして。」

「いやいや。こっちこそ!あれを想定してなかったのは俺の落ち度だよ。想像以上に残響がでかくて失敗したよ。ごめんね。」


ああ、優しいご主人様。

イチは一生付いて行きます!





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





驚いて変な声を上げてしまった。

振り向くとイチが目を覚ましていた。

なんだか不機嫌そう?



「イチ!目を覚ましたんだな。よかったよ。調子はどう?」

「あ、はい。大丈夫です。ちょっとクラクラしますけど。すみません。ご心配をおかけして。」

「いやいや。こっちこそ!あれを想定してなかったのは俺の落ち度だよ。想像以上に残響がでかくて失敗したよ。ごめんね。」

「イチは一生付いて行きます!」

「お、おぅ。」


イチは首を横に振り、鼻息を荒くしながら、唐突な宣言をした。

どういう思考でそこに至ったのかよく分からないが慕われている事は分かった。

信頼を裏切らないようにしよう。

そのためにはまずは今回の反省だな。


「ふぁぁぁあ。んー?おはよー。」

「ゼン、おはよう。起きたか?調子はどうだ?」

「んー?なんか耳の奥がキーンってしてる気がする。なんだろー?」

「ゼンくん、堪忍な。うちが作った銃の音が大き過ぎてもうたんや。洞窟内やったらか音が響いてえらいことになってもうて。」

「そうだったんだ。もう治まってきたし。大丈夫!気にしないで!」

「うん。そうだよ。次は気をつけよう!ドーラちゃん!」

「うん。ありがと。2人とも。」

「にゃー。」

「シロやんもありがとー。」

「にゃー。」



うんうん。

失敗は次に生かせばいいのだ。



「じゃあ、そろそろ行こうか。」

「「はい!」」



俺たちはその後迷宮の探索をほどほどで切り上げて帰ったのだった。

お昼ご飯のイノシシの鍋と焼肉は美味しかったです。


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