67 変形魔法活用
ドーラが魔法板の作成の殆どをやってくれたので、試作スピードが早い早い。
通常、魔法板の作成は、素体を用意してコードを素体に書き込み、焼き付けて完成する。
特に困難なのがコードを素体に書き込む作業でコードが少しでも乱れると上手く動作しなくなる。
それを解決するために俺はコード記述用の液体操作魔法を自作して、やたら長い魔法を使って書き込んでいた。
魔法を使って形状を作成するため、詠唱ミスをしなければ間違わない。
しかし、新しいコードを作る度に液体操作魔法を自作しなければならない。
本当に手間である。
これを解決したのが、ドーラの変形魔法である。
素体に変形魔法で溝を彫ってコードを記述する。
彫った溝に溶液を入り込ませ、余分な溶液を拭き取ることで記述することができる。
ドーラは細かな細工も変形魔法で作ってしまえる程に極めており、余裕でコードを再現させていた。
俺では上手く形成できなかったが、きっと熟練度の差に違いない。
俺だってもっと熟練すれば・・・いや無理か。
潔く諦めてドーラに任せよう。
適材適所だ。
うんうん。
と言うわけで1週間足らずでシールドの魔法道具は形にすることができた。
魔法板はドーラの変形魔法のおかげでクレジットカードくらいのサイズにできた。
まずは魔力は自前で供給する方式として、魔力を込めるだけでシールドを展開できるようにした。
下級の魔法程度の魔力消費でオークの一撃を1回ならば防げるはずだ。
展開速度は魔力操作の技術に依存するからなんとも言えないが、おそらく許容範囲内だろう。
魔力を余らせている戦士系の人に喜ばれるかもしれない。
まあ避けるのが基本だが。
難点はシールドが展開される位置が魔法板を基準として固定されていることだ。
装備する箇所には気を配らないといけない。
まあ些細な難点かな。
魔力の少ない人向けに魔石から魔力を供給する魔法道具も作る。
こちらは魔石を交換できるようにした。
当初はバックラーを考えていたが一般人がバックラーを持ち歩くのは微妙ということで杖型にした。
筒状のケースの中に魔法板と魔石を搭載し、シールドの展開位置は分かりやすく、杖の先とした。
戦闘職の人たちではないし、護身用なのでこんなものでいいだろう。
今回作ったこのシールドの魔法道具はかなり売れるものだと思う。
本職の冒険者でも詠唱なしでシールドが張れるのはアドバンテージだし、一般人からしたら言わずもがなだ。
ドーラが居れば簡単に量産できる。
特に冒険者用なんて素体と溶液さえあればいいからいくらでも作れる。
ドーラの魔力が続く限りだが。
加工を俺ができないからドーラに頼るしかないのだ。
ゼンたちでも出来なかったのでドーラが特別なのだろう。
そういう訳なのでドーラには頑張って量産してもらおう。がっぽがっぽだ。
ちなみにもっと性能のいい中級レベルのシールドの魔法も作り、魔法道具化してある。
サイズは500円玉くらいにまで圧縮され、シールドの展開位置を任意で操作できるようになっている。
魔力がある程度いるが、今の俺たちには問題にならない程度だ。
イチの全力フルスイングでも耐え切れる性能を誇る。
イチの全力は既に劣等地竜の鱗を粉々に粉砕できるレベルなのだが。
今一番の攻撃力はイチなのである。
一体どこに向かっているのやら。
名前:ドーラ
レベル:7
性別:女
年齢:13歳
種族:小人
職業:練成師、商人
属性:土
罪科:なし
称号:なし
スキル:練成、工作
説明:小人族の少女。
小人族の例に漏れず、10歳で体の成長は緩やかになる。
工作大好きメガネっ娘。




